クリスティー短編集Ⅰ(新潮社)
アガサクリスティーの短編集の中で、どれが好きか?といったら、まずは新潮社の『クリスティー短編集Ⅰ』かなと思います。この中には有名なポアロとミスマープルとパーカーパインという登場人物の短編がいくつか収められているのと、そういった有名な探偵が出てこない作品2作品が含まれているので、アガサの見本市の紹介みたいな本になります。この短編集で自分が好きな理由はなんといっても、『検察側の証人』と『うぐいす荘』が収められていることが大きいです。この2つの作品には有名な探偵は出てきません。
作品が有名過ぎて、原作を読むよりそういった映像化されたものを先に知ってしまう事もあるでしょう。自分は幸運にも先に原作を読んでから、映像を見たという『検察側の証人』がありますが、これは、傑作、そう、読者をだます最高なお話です。(ネタバレをしないように伝えるのは非常に難しい!)
この短編は新潮社の”クリスティー短編集Ⅰ” 一番目を飾る作品です。のちにBBCドラマや昔の映画化されたものを見て結末が違ったので、驚いたり、ああ、コンプライアンス的に問題があるのかもなあ、と思ったりしたものです。
『うぐいす荘』も有名な探偵の出ない短編ですが、これも大好きな短編です。アクリスという結婚適齢期をすぎた女性が主人公なのですが、やっとステキな人と巡り合い結婚できたのに、不安が付きまといます。その不安の正体に気付いた時、彼女はたった一人で危機に立ち向かうのですが、そこの描写がスリル満点なのです。最後のセリフがまた最高の一言です!
ちなみにこの”うぐいす荘”という作品は早川文庫では『ナイチンゲール荘』という題で『リスタデール卿の謎』という短編集に収められています。(この短編集も大好きなので、この話はまたの機会に)ほとんど訳は同じですが、自分は『ナイチンゲール荘』の方が好きですね。最後のセリフのニュアンスが若干違うだけですけども。