ナイルに死す

旅行したくなる度        ★★★★★
トリックの冴えてる度      ★★☆☆☆
事件が起こるまで長い度     ★★★★☆
登場人物のセリフのすばらしさ  ★★★★★
無人島に持っていきたい度    ★☆☆☆☆


この作品は、アガサ本人が(旅行ものとして)描いたミステリーの中でもお気に入りの作品。そう、ご本人が気に入ってる作品なのです。
余計な情報を入れるとしたらアガサ本人が失踪したという有名な事件の後の、執筆です。
アガサ失踪事件というのはアガサにとって大きな事件であることに間違いはないのですが、その後のある意味吹っ切れている作品なのかもしれません。
というのはこの作品は『お金も美貌も手に入れてる若い女性のリネット』『お金はないが恐ろしく色気があってイケメンの男のサイモン』『お金はないが個性的で魅力ある女性のジャクリーン』の3人の三角関係を中心にまわっているからです。
アガサの失踪も、旦那様と若い女性との三角関係みたいな事が原因でしたし、そして、この作品はアガサの二回目の結婚の後の作品で自分としてはちょっと下世話に勘ぐるところもあるわけです。(二回目の結婚のお相手は年下の考古学者で、ご夫婦でエジプトに訪れていらっしゃることも関係が絶対ありますから)そして、その前に発表している『ひらいたトランプ』という作品があるのですが、(これも独特な面白い作品)そこにでてくる登場人物の1人がこちらの『ナイルに死す』の中にも出てきてポアロの相棒として活躍していることも申し上げておきます。誰かってことは、ネタバレしたくないので、読んでいただけたら、と思います。



ネタバレなしの紹介

お金も美貌も手に入れてる若い女性リネットは、何かと自分の意図しないところでも敵が多い。(お金をめぐるトラブルや彼女なりの正義感やある意味富裕層の特権意識が引き起こす諸々等)ある時友人の婚約者サイモンを奪って結婚し、新婚旅行に出る。その先々で元婚約者で、元友人の女性ジャクリーンが嫌がらせのために新婚夫婦リネット、サイモンの前に現れる。不安に思ったリネットは船に乗り合わせたポアロに、この状況をどうにかしてほしいと依頼するが、、、という流れ。
新婚旅行先というのがまさにエジプトであり、ナイル川を渡る豪華客船カルナク号が舞台であるので、もちろん豪華で異国情緒も満点。


しかし、事件が起こるまでが長いのであります。ポアロの長編は大好きな自分ですが、それでもこの作品は事件が起こるまでが長いので、より長編に感じます。日本の火曜サスペンスドラマだと、開始早々、殺人が起こりますが、それに慣れてる人だと驚くくらいこの作品は前半全く殺人も事件もおこりません!実際に事件が起こるのは後半から。後半から一気に事件の流れが早まります。それを踏まえて、これはこういう作品なんだと思って楽しんで読む方がいいかと思います。
そして、これももうすぐハリウッドで撮影された映画が”ナイル川殺人事件”という題で日本でも公開されますが、内容的にちょっと変えているんではないかな、と思ってます。(これを描いた時点ではまだ映画はみてません)内容を変えてないのなら、推理物としては火曜サスペンスを見過ぎた自分にとってはトリックがちょっと荒っぽいなあ、、、って思わないでもないんですが(贅沢を言ってますね)、作品の感想としては昼ドラ的な要素と紀行ものが合わさった最上級なものという感想です。たしか、短編でも似たような状況とトリックを使ってどこかで1編書いてます。(題名を思い出したらまた書きますね)それよりも、それぞれの人物に言わせるセリフが本当にすばらしく人間味にあふれていて好きです。そして今回の小説でポアロは名探偵でもありますが、まるで占い師のように、若い女性に予言して回ったりお説教したりしています。そこがちょっと他と違う感じがしましたね。
映像化に至ってはこの作品は女性が圧倒的に魅力的に描かれてほしいという思いでいます。あらためて読み返して映画を見るのが本当に楽しみになっています。

オリエント急行の殺人

アガサが好きなら絶対読んでる度★★★★★
トリックが前代未聞度     ★★★★★
超有名度           ★★★★★
無人島に持っていきたい度   ★★☆☆☆ 

これは超有名な作品ですね!
アガサクリスティーと言えば、これでしょう!と言われる作品のうちの一つと言っていいでしょう。

アガサの作り出した大人気の探偵、ポアロが出てくるこの作品が特に有名なのは奇想天外な犯人というのもあります。
何度もなんども映画化やドラマ化されてきました。それは、華やかな豪華列車が舞台であること、登場人物が多い事、そして列車を使った本格的密室ミステリーであるとういう、おいしそうな状況がそろっているからだと推測しますが、オリエント急行という響きがまたいいのです!いかにも異国情緒あふれるし豪華な寝台列車というだけでも憧れでしょう。
映像化するにあたっては、有名な俳優たちを沢山どっさり配役に使える利点があります!
(出演料は恐ろしい額だろうけど、ヒット間違いなしと予想できるから安心してオファー出来るかも)ただ、大雪と豪華列車が頭を悩ますところ、、、、。そりゃ”タイタニック”という映画ほどには、製作費は掛からないかもしれませんが(あれは豪華客船を海に沈めちゃいますから)列車をとにかく豪華にしないと映像がしょぼくなってしまうことは確かですし大雪も大事。この作品の魅力の一つは状況の特殊さであり、そこが最大の舞台効果でもあるのですから。
この小説は、ある意味フィクションではないところもあります。というのは、アガサが生きていた当時に実際に起こった誘拐事件にアガサ自身が心を動かされて書いたと言われているからです。復讐、敵討ちといった気持ちがあったのではないかと思われるのです。そういったアガサの正義感をふまえて読むとまた違ったイメージになるかもしれませんね。
ただ、客観的にみた推理ミステリー単体としては、名探偵ポアロが初めて”迷”探偵になる作品でもあり、あまりに状況が整っている事や、絶対的悪が存在する事など反則技も出てきます。(言っている意味は真相をご存じの方なら分かりますよね?読んでみた人は察していただきたい)
純粋に推理物としてはちょっとどうかな、とは個人的に思います。じゃ、書けば?って言われると絶対書けないですけど。しかしミステリーとして、すばらしい小説です。
今後どの小説家がこのジャンルに挑戦しても、二番煎じと言われることになるトリックです。


ハリウッドでは、ジョニーディップが出演し、映画化がされたました。これも有名な俳優陣がわんさか出てきます。見るだけでため息が出そうな豪華さです。当時話題になりましたね。

日本では数年前に野村萬斎さんがポアロ役となって脚本家三谷幸喜さんアレンジでドラマ化されていますね。有名どころの俳優さんが沢山出てきます。日本を舞台に豪華列車での密室ミステリーの映像化は難しかったと思いますが、三谷幸喜さんらしくユーモアを交えてエンターテイメントにまとめていたのを思い出します。

好きな短編集は?

クリスティー短編集Ⅰ(新潮社)

アガサクリスティーの短編集の中で、どれが好きか?といったら、まずは新潮社の『クリスティー短編集Ⅰ』かなと思います。この中には有名なポアロとミスマープルとパーカーパインという登場人物の短編がいくつか収められているのと、そういった有名な探偵が出てこない作品2作品が含まれているので、アガサの見本市の紹介みたいな本になります。この短編集で自分が好きな理由はなんといっても、『検察側の証人』『うぐいす荘』が収められていることが大きいです。この2つの作品には有名な探偵は出てきません。


作品が有名過ぎて、原作を読むよりそういった映像化されたものを先に知ってしまう事もあるでしょう。自分は幸運にも先に原作を読んでから、映像を見たという『検察側の証人』がありますが、これは、傑作、そう、読者をだます最高なお話です。(ネタバレをしないように伝えるのは非常に難しい!)
この短編は新潮社の”クリスティー短編集Ⅰ” 一番目を飾る作品です。のちにBBCドラマや昔の映画化されたものを見て結末が違ったので、驚いたり、ああ、コンプライアンス的に問題があるのかもなあ、と思ったりしたものです。
『うぐいす荘』も有名な探偵の出ない短編ですが、これも大好きな短編です。アクリスという結婚適齢期をすぎた女性が主人公なのですが、やっとステキな人と巡り合い結婚できたのに、不安が付きまといます。その不安の正体に気付いた時、彼女はたった一人で危機に立ち向かうのですが、そこの描写がスリル満点なのです。最後のセリフがまた最高の一言です!
ちなみにこの”うぐいす荘”という作品は早川文庫では『ナイチンゲール荘』という題で『リスタデール卿の謎』という短編集に収められています。(この短編集も大好きなので、この話はまたの機会に)ほとんど訳は同じですが、自分は『ナイチンゲール荘』の方が好きですね。最後のセリフのニュアンスが若干違うだけですけども。

アガサは子どもも読んで楽しい

自分がミステリーの本にハマったのは小学生低学年だったと思う。アガサクリスティーは早川文庫という赤い背表紙が有名だと思う。もはや、早川文庫=アガサクリスティーとして思うくらいに、小学生の自分は学校の図書室で借りまくって読んだ記憶がある。最初に借りた本はなんだったのか、、、、忘れた!のであるが『アクロイド殺し』か『オリエント急行の殺人』等の有名な作品だったと思う。学校の図書館で借りる前は、小学館から出ている分厚い小学生ご用達の本で名探偵ホームズや江戸川乱歩などは読んでいたし、テレビでは火曜サスペンスのドラマも大好きで再放送を夏休みの昼に見るのが楽しみだったので、推理ミステリーには耐性があったのだ。殺人事件の小説が小学生にはどう映るかなんて、大人になった自分にはもう思い出せないけど、自分は普通にミステリー好きの人間として大人になった。アガサクリスティーの小説には遺産相続で殺すし、結婚した相手が殺人者だったり、愛人が邪魔になって殺しとかありとあらゆる殺人のオンパレードで、毒薬についてもいくつも出てくるし今から考えるとよく理解できたな、子どもの自分!と思ったけども。でも、それ以上にどんでん返しの連続で面白い方が勝ったし、一度読むと次から次へと読みたくなるそんな魅力に取りつかれた幸運を手に入れてしまった。それは、大人になっても自分を励まし楽しませたし寂しさを無くさせた。(大事だ、孤独を埋めるアイテムは)
例えばだけど、今なら、漫画やアニメ、ゲームや恐ろしい動画サイトの方が刺激が強いと思う。それに比べたらアガサの本などかわいいもんである(たぶん)だから、面白い!と思ったらガンガンに読むべきなのだ!ポアロも面白いがミスマープル物は人生の教科書にもなる”おばあちゃんのおせっかいな知恵”的なものも感じられておすすめだ。

一番好きな短編は何?(うぐいす荘)

うぐいす荘(ナイチンゲール荘)

短編で女性の心理が分かる度★★★★★
ゾクゾクする度      ★★★☆☆
無人島に持っていきたい度 ★★★★★ 
アガサクリスティーの短編集は戯曲の原案も含めて18編もあり、その中には15本のお話が詰まっているとはお伝えしたと思います。(出版社によって増減アリ、重複する話もアリ)
アガサが描いた短編の中にはポアロ、マープルなど有名な探偵の出てくるもの以外の名もない登場人物のものもいくつかありますが有名な探偵が出ずともその短編の数々の短編もびっくりするくらいすばらしいのです。アガサクリスティーが好きで読み込んできている自分が、何度も読んで、さらに短編なのに『やっぱりアガサは天才だ』とにやにやしながら読んでしまうのですから。

ここではそんな、有名な探偵が出てこない作品の1つ『うぐいす荘』を紹介しましょう
これは新潮社のクリスティー短編集Ⅰの巻頭を飾る一編です。
早川文庫では『ナイチンゲール荘』という別名でも収録されています。



ネタバレなしの紹介
今の時代にそぐわない言い方をすると、アクリスという結婚適齢期を過ぎた女性が主人公で、長い間付き合った結婚直前の男性と別れた直後に、別のステキな男性と出会い見事に結婚してからの話なのである。背景はこんな感じ。
幸せな結婚生活を送っているのに、ある日突然、不安が襲う。それも昔結婚直前までいった元カレから電話があってから胸騒ぎが止まらないのである、、、、と書くと『え?恋愛もの?三角関係?どこがミステリーだよ?』って言われそうですが立派なミステリーになっているのです。
そこはアガサですから!
この面白さは、主人公のアクリスの聡明さです。ある理由があって彼女は命の危機に見舞われるのですが、頭をフル回転させてたった一人で危機に立ち向かうのです。その恐怖の描写の細かさ、心情の動きがスリル満点なのです。最後のセリフがまた最高の一言です!
短編であっという間に読めるし、ポアロもマープルもいないけど、アガサクリスティーってこういう話も書くんだ?!と驚いていただきたい短編です。
『うぐいす荘』『ナイチンゲール荘』は内容はほぼ同じ訳がされていますが、自分は実は『ナイチンゲール荘』の方が好きです。最後のセリフのニュアンスが全然違うのです。これは完全に個人の好みの問題です!
ちなみに『うぐいす荘』は井上宗次さん、石田英二さん訳、『ナイチンゲール荘』は田村隆一さん訳です。


ここからはネタバレしながら自分の感想を言っています


結婚適齢期を過ぎた女性(今の時代にそぐわない)が、いきなりイケメンにプロポーズされて結婚したというところから始まる。そこまでの簡潔な小説の入りは見事で、元カレとの別れなんかも実に分かりやすく表現されています。シンデレラストーリーかと思いきや、実は結婚した相手が殺人犯であったというヒヤヒヤドキドキする話なんです!しかも今夜自分が殺される予定だというのを偶然に知ってしまうが、逃げ出すタイミングも逃してしまう。そこで知恵をしぼり、たった一人でその危機に立ち向かうという、スリルとサスペンスの話なのであります。

一番好きなポアロものは?(5匹の子豚)

五匹の子豚

ポアロの推理が冴えてる度 ★★★★★
小説に情熱を感じる度   ★★★★★
最高傑作度        ★★★★★
無人島に持っていきたい度 ★★★★★   

ポアロの登場する小説が沢山ある中で、どれが一番好きかと聞かれたら『5匹の子豚』と答えます。
題名こそかわいいですが、内容はがっつり大人向けでございます。
近代化に向かう女性の強さ、若さ、芸術家へのリスペクト、ゴシップ、スキャンダル、母の愛、強い愛、などが詰まっているのである!謎解きもすばらしいのですが、なんといっても登場人物の魅力的な事と言ったら、アガサクリスティーの最高傑作と言ってもいいと思われます。
この作品は自分は何回も読んでいるけれど、映像化した時どんな俳優さんがいいかなあ、なんて思いをめぐらせて読んだりしてるのも楽しかったりします。演じる俳優さん達もきっと楽しいだろうなと思うんですよ!

ネタバレなしの紹介
16年前に有名な画家だった父を殺した容疑で捕まった母、犯人は母しかあり得ない状況がそろっていた。しかし母は最後まで無実を訴え、夫は自殺だったと一貫して言うのである。妹には『あなたは何も心配しなくていいんですよ』という意思と手紙だけ残して病気で獄中でなくなってしまう。当時小さかった娘は何も知らされないまま成長し、大人になってから母の事を知った娘は名探偵ポアロに『母の真実を』(出来れば無実を)と依頼する。
無実を訴える母の気高い姿芸術家の父の狂気の情熱若き美しき愛人、この3人だけでも濃い、良い話が出来そうだがここに加わるのは母の妹夫の兄親友で、母と父は犯人と被害者として亡くなっているので、実際に話を聞ける当時の関係者は当時の愛人を含め5人。これをポアロは五匹の子豚になぞらえて、解決していくのである。
この小説でポアロは、当時の関係者を一人一人訪ね歩いて話を聞き、『もう昔のことだ』という彼ら、彼女から鮮やかに当時の記憶をよみがえらせていく。
アガサクリスティーは何年もたった後の過去の事件を解くミステリーはいくつか書いていて、得意な方だと思う。
人が過去を思い出すとき、都合のいい事、悪い事も一緒に思い出すが、ポアロはそれを聞き逃さない。
何人もの人から話を聞き、他の人の話から矛盾を見つけ出し辻褄を合わすことの組み立てはすばらしい。自分は読んでいてこんがらがりそうになるのだが、最後に鮮やかにすっきり過去のタイムテーブルが合う時、過去の矛盾に読者の自分も気がつくのである。その組み立ても素晴らしいし、この作品はやはり、人物の描写のすばらしさが桁違いに鮮やかだ。魅力的な人物ばかり登場するといったらそれまでだが、この作品はそれぞれが昔の同じ事柄、人物を思い描き同じ時間を思い返すことで、その人なりの想い、感情の書き分けが際立って素晴らしい事が分かる。本当に大好きな作品なので、つい紹介にも力がこもることをお許し願いたい。

アガサと無人島と言えば『そして誰もいなくなった』


『そして誰もいなくなった』

アガサクリスティーの代表作の一つと言っていいですね。
謎を解くというよりは、最後のどんでん返しに読者は驚き魅力にハマるのです。
この作品が発表されてから、これと似たような作品が何度も発表され、オマージュされてきたかわかりません。
この小説は映画化もされてますし、結末も有名なのでいまさら隠す必要もないかもしれません。
でもこれから読む人はいくらでもいる(かもしれない)ということを踏まえて、いつも新しい驚きを持って欲しいと思いますのであえてここではネタバレはしません。

ネタバレなしの紹介
この作品は、無人島に招待された10人の男女がインディアンの子守唄になぞらえて死んでいくミステリーです。
可愛らしいはずのインディアンの人形がまた異様に不気味で、人形が消えると誰かが同時に消えていくようになっているのです。誰が?何のために?

無人島という、隔離された世界で他に助けも呼べばない状態で、一人一人死んでいくのです。
生き残っている人も誰も信じられない恐怖で追い詰められていき発狂寸前です。
ラストは、読者を驚かす仕掛けが待っています。

自分はこれを読んだとき、あんまりな話だなと思ったのです。
もちろん文句なしに面白かったですよ!
この仕掛けを考えたアガサクリスティーはさすがだ!と思いましたし天才だと思いました。
最高傑作と言われてる理由も分かります。
でも、内容的になんだかむなしいなあ、、、、って思ったのです。
完全なる自分の趣味です。
無人島に男女10人滞在できるほどの屋敷は(大きな立派な館)あるんですが、バカンス!っいう感じはまったくなく、ちっとも楽しそうじゃないし(あたりまえっちゃ当たり前、仲良し10人組のパーティーじゃないんです、ほぼ他人同士)それぞれが秘密を抱えてることが前提で、どよ~~~んとした灰色な雰囲気が漂うんです。
それがミステリーだといわれたら、全く文句はありません。
でも、なんていうか怖い方が勝つホラー作品というか、
そう、ミステリーというよりこの作品は自分にとってはホラーでした!
怖い話がお好みの方は是非、お勧めします!

最後まで犯人は分からないまま、読者を引っ張っていく力強い文章力が魅力です。
そして題名が『そして誰もいなくなった』なんてちょっとしゃれてる題名というのも、この作品の価値があると思ってます。他の題名だったら、ここまで有名になったかと言われたらどうかなと思います。

蛇足ですが、作家の赤川次郎さんが、このアガサクリスティーの『そして誰もいなくなった』をリスペクトしていて、
”自分はこういう作品を書きたい”とそう思って小説を書いてきたと知った時、驚いた自分です。
ユーモアミステリーのイメージがある作家の赤川次郎さんですが、『夜』という作品を読んだときとても怖いホラーだったので、そのことを思い出しました。

アガサクリスティー短編集

アガサクリスティーの作品は小説だけでなく短編集も戯曲も有名なのですが短編集にいたっては
15篇ほど(出版社により増減)もあります。その短編集の1つ1つに15本はお話がつまってる状態なので、紹介するのも一苦労なのです。自分にとってはうれしい悲鳴なのですが、一つ一つ大事に紹介していこうと思っています。

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短編集

ポアロ登場
おしどり探偵
海から来た男(謎のクイン氏登場)
翼の折れた鳥(クイン氏)
火曜クラブ
死の猟犬
パーカー・パイン登場
死人の鏡
クリスマス・プティングの冒険
ヘルクレスの冒険
愛の探偵たち
黄色いアイリス
※この他に表題の無いクリスティー短編集は4編ほどある
 (中には重複する内容あり)

細かい紹介はこれからじっくり今後のブログでやっていきたいのですが、まずはざっとネタバレなしの自分の偏見と趣味を交えた簡単な説明をしておきます
ポアロを手っ取り早く知りたいあなたにはもちろん『ポアロ登場』を読むのが良いでしょう。
しかし自分の好みでいうと、ポアロは長編の方が魅力的なので、これは逆に長編のポアロを知った後で読んだ方が
面白さが分かるかもしれない。あくまでも好みですが。
ポアロの魅力が分かる短編というならば、『ヘルクレスの冒険』『クリスマスプティングの冒険』の方がおすすめですね。
あくまでも個人的な好みですが。
ちなみに『クリスマスプティングの冒険』にはポアロだけでなく何故か1本だけミスマープル物が入っています。
どうしてかは分からないけど、ちょっとしたおまけというか、プレゼントみたいなものかもしれません。
『愛の探偵たち』はポアロ、ミスマープル、クイン氏、そのような有名な探偵が登場しないもの、の短編が集まったもので、まさに『愛』がテーマのものが集まったロマンチックな短編集です。有名なのは戯曲『ねずみとり』の原案『三匹の盲ネズミ』が収められている事。これは別の機会にまたじっくりと。
推理物としてもいいのですが、ちょっとした不思議な愛の小説の短編集と言えます。この短編の中で自分が特に惹かれるものとしては『四階の部屋』これはポアロの出てくる話ですが、ちょっとへんてこりんな話です。年の離れた若者とポアロおじさんとの関わる話。コメディーでは?と思うような展開ですが、結局は愛の物語といえるんでしょうね。とにかくユニークな印象のお話です。(個人的感想)
『火曜クラブ』はミスマープルもの。安楽椅子探偵ものの代表です。ただのおしゃべり好きのおばあさんだとミスマープルのことをみんなが軽んじてるのですが、ずっと座って話を聞いていたミスマープルが事件をいとも簡単に解いていくところが小気味いい物語。安楽椅子探偵とはいうものの、のちに短編ではないけれど、アガサクリスティーは『復讐の女神』という長編では、ミスマープルに冒険をさせています。(その話はまた『復讐の女神』のときに)
『パーカー・パイン登場』は実にユーモアが詰まった話です。あなたは幸福ですか?そうでなかったら、パーカー・パインに相談を!という頼もしい新聞広告を出しているところからして、すでに怪しいのですが、これがまた鮮やかに問題を解決し、みんなを笑顔にして終わるのですからやられた!と思います。今日のところはこの辺にしときましょう。紹介してるうちに自分もまた読みたくなってくるから不思議です!

アガサクリスティー基本情報

アガサクリスティー(1890-1976)英国ミステリーの女王と言われるように女性

代表的な登場人物
エルキュール ポアロ
ミス マープル
パーカーパイン(サタースウェスト)
ベレスフォード夫妻

舞台や映画になった作品は数知れず
『ABC殺人事件』
『オリエント急行の殺人』
『そして誰もいなくなった』
『アクロイド殺し』

どれも執筆当時、前代未聞のミステリーであったということ
これを元にインスパイアされた作品群がいくつもあるので
ミステリー好きでアガサクリスティーを読んでないなんて
もったいない事なのです

無人島に持っていくなら何を持っていく?
よくある質問でしょう
私は『アガサクリスティーのミステリー』と答えます
普通は生き抜くための実用的なサバイバルの教科書と答えるでしょう
それはそうでしょう、もちろんそれも大事。 しかし 人は実用書に書いてある事のみで生きるにあらず
ワクワクや不思議な事やミステリーに胸をときめかす、そういう心が絶望の淵から自分を這い上がらせることもあると
自分は信じていて、自分にとってその一つが『アガサクリスティーのミステリー』と思うのである
結末が分かっている推理小説も何度も読み返したくなるほどのストーリー、登場人物の魅力にあふれていて、
自分にとっては、いつ終わるとも分からない無人島生活において退屈することの無い本であろうと思われる
まあ、それくらい好きだ―って叫ぶだけのここはそういうブログです

著書一覧(発行順)
1  スタイルズ荘の怪事件
2  秘密機関
3  ゴルフ場殺人事件
4  茶色の服の男
5  チムニーズ館の秘密
6  アクロイド殺し
7  ビッグ4
8  青列車の秘密
9  七つの時計
10 牧師館の殺人
11 シタフォードの秘密
12 邪悪の家
13 エッジウェア卿の死
14 オリエント急行の殺人
15 なぜ、エヴァンスに頼まなかったのか
16 三幕の殺人
17 雲をつかむ死
18 ABC殺人事件
19 メソポタミアの殺人
20 ひらいたトランプ
21 もの言えぬ証人
22 ナイルに死す
23 死との約束
24 ポアロのクリスマス
25 殺人は容易だ
26 そして誰もいなくなった
27 杉の柩
28 愛国殺人
29 白昼の悪魔
30 NかMか
31 書斎の死体
32 五匹の子豚
33 動く指
32 ゼロ時間へ
33 死が最後にやってくる
34 忘れられぬ死
35 ホロー荘の殺人
36 満潮に乗って
37 ねじれた家
38 告殺人
39 バクダッドの秘密
40 マギンティ夫人は死んだ
41 魔術の殺人
42 葬儀を終えて
43 ポケットにライ麦を
44 死への旅
45 ヒッコリーロードの殺人
46 死者のあやまち
47 パディントン発4時50分
48 無実はさいなむ
49 鳩のなかの猫
50 蒼ざめた馬
51 鏡は横にひび割れて
52 複数の時計
53 カリブ海の秘密
54 パートラム・ホテルにて
55 第三の女
56 終わりなき世に生まれつく
57 親指のうずき
58 ハロウィーン・パーティー
59 フランクフルトへの乗客
60 復讐の女神
61 象は忘れない
62 運命の裏木戸
63 カーテン
64 スリーピング・マーダー