ひらいたトランプ

ゾクゾク度        ★★★★★
数回読んで味を占める度  ★★★★★
設定の面白さ度      ★★★★★
無人島に持っていきたい度 ★★★★★
 
これは、エルキュール・ポアロ作品です。
ひらいたトランプというように、トランプのゲームが出てきてきますが、ババ抜きとかじゃないですよ!この作品は日本人にはなじみのないゲームが出てきます。ルールは分からないけれど、登場人物が熱狂している描写が出てくるので、面白いゲームなんだろうな、と思われます。賭け棒とか出てくるし、賭け麻雀に近いかもしれません。もちろん、そのトランプゲームが、事件の大事な要になってきますが、ルールを知らなくとも楽しめる作品です。”こんなトランプゲームがあるんだな”で、いいので、読み進めて下さい。人間の本質をあぶりだしていく、とてもゾクゾクする作品です。自分はとてもこの作品が好きですね。

ネタバレなしの紹介

この作品が他と違っているのは、ここに出てくる登場人物は全員、殺人を犯してる事。でも、法の合間をかいくぐって、誰もなんの刑も受けてはいない。え?ネタバレじゃないのかって?大丈夫です。そんなことではこの作品は語れません。そんな犯罪者たちをコレクションして楽しんでいる”シャイタナ氏”が一番悪いのですが、というお話。トランプゲームの様子、やり方には人間性が出るということからのアガサの人間観察の鋭さがすばらしいです。最後の最後まで犯人が分からない、読者を裏切らない面白さがあります。私は何回も読んでますが、結末を知っててもやはり面白いです。私はこの作品が好きなので定期的に読みたくなる一冊なのです。

火曜クラブ

ミス・マープルが分かる度★★★★★
サクッと読める度    ★★★★☆
無人島に持っていきたい度★★★☆☆



これはミス・マープルの短編集です
安楽椅子探偵として有名な探偵ミス・マープルの短編集といった方が分かりやすいかもしれません。
ミス・マープルというと、アガサの作品の中でも、ポアロと並んで人気の探偵です。最初の登場は、短編でした。
それがこの『火曜クラブ』です。13篇のマープルだらけのお話です。
このブログの中で、”クリスティ短編集Ⅰ”の中の5編と重複しているお話がありますので、それについては割愛しています。

アガサはマープルの事をご自分の祖母に似てると言っています。ポアロよりも、好きな登場人物だったらしいことも。
自分も小学生のころから、ミス・マープルを読んで、人生について、人間性について、柔らかく話すマープルの様子に親しみやすさを感じていました。”さっきから聞いてますとね、誰と村の誰が似ていて、大抵どこでも人間性ってのは変わらないもので、、、あら、網目がここで、、、そうそう、なんのお話だったからかしら、でも本当のところ、さっきの話を聞いていますとね、村のトラウトおばあさんの事を思い出しましたのよ”とそんな感じです。本当に実在のおばあさんがしゃべっているようです。最初は、まどろっこしく聞こえますが最後には鮮やかに謎が解けます。それで、その場にいた人たちがだんだんミス・マープルに一目置くようになり、この火曜クラブを読み終わるころには、大抵の人がマープルのファンになるという訳です。


この『火曜クラブ』というのは、ミス・マープルの甥のレイモンド、その知り合いの警察関係や友人の画家など様々な職業の人々がたまたま、ミス・メープルの家に集まっていたのが火曜日だったことに由来します。余興として”各自が真相を知っている実在の事件をかたり、皆で推理し合うというゲームをするのです。最初は、ミス・マープルの事を皆が”静かなおばあさん”という外見にとらわれて、マープルなしで話を進めようとするのですが、ひとたび推理を始めれば瞬く間に事件の真相を解いてしまうので、みるみる一目置かれるようになります。
アガサの作品ではありませんが、アイザック・アシモフという作家の作品の『黒後家蜘蛛の会』の給仕のヘンリー
もこのような人物です。興味がればそちらも読んでみても面白いかと思います。


ネタバレなしのそれぞれの紹介



※新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複している者については割愛しています。

『火曜クラブ』
新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複”火曜の夜の集い”と同じ話

『アスタルテの祠』

新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複”アスタ―ティーの神殿”と同じ話

『金塊事件』

新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複

『舗道の血管』

新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複

『動機対機会』

新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複
ここまでの5編は、以前紹介したアガサクリスティー短編集Ⅰの中に収められていますので、(しつこくてすみません)そちらを参考にしてみてください!

聖ペテロの指のあと
これは、ダイイングメッセージにヒントがあります。そこにマープルが気がつくところが重要なお話。マープル作品ではないですが同じようなダイイングメッセージが重要な作品は他でも見ますね。謎解きとしては英語が得意でなければそもそも解けないかもしれないです。(赤川次郎先生の三毛猫ホームズでも似たような謎解きがありますね)

青いゼラニウム

トリックが重要な作品です。壁紙の花がいつのまにか変化するトリックです。そして思いもかけない犯人が出てきます。

二人の老婆

いかにも、映像化できそうな、ドラマ化できそうな作品です。日本では横溝正史の双子の老婆が出てくるお話が有名かと思いますが、それを思い出さないでもありません。内容はまったく違いますが。男性は、老婆に対して、ひとくくりに見ていて個性をあんまり感じてないんだなとアガサも感じていたようですね。



四人の容疑者

手紙のトリックです。話の本筋は不気味なんですが(詳しくはこれ以上言いませんが)容疑者四人の中で誰がどうなのか?と考えるのが興味深い作品です。


クリスマスの悲劇

このお話はいよいよミス・マープルが出題者となるお話です。マープルの体験談です。事件を語る様子に、そして真相を語る様子に、マープルの性格がよくでている作品だと思います。




毒草

このお話は、語り部が非常に口下手であるという設定になっているので読んでいて、非常にまどろっこしいです。しかしそれで、かえって『火曜クラブ』が実在するかのような気持ちになります。口下手な語り部から少しずつ事実が見えてくる中で、人物像に色がついて、表情が見えて事件の真相にたどり着くという事になりますが、解決に導くのはやはりマープル。人間性を語らせたらミス・マープルにかなう人はいません。そんなお話です。

バンガロー事件

語り部が美女で有名な女優ジェーン・ヘリアのミステリー。『火曜クラブ』の参加者の中で、いろんな意味でざわつくほどの、美女なんですが自分を賢そうに見せようとはちっとも思っていない。誤解されることを覚悟して言うと、”殿方って頭のゆるい美女がお好きでしょ?”って信じて演じてる風でもあります。(ほんとはどうか分からない)このころの女優さんてこういう方が好まれたんでしょうか。作品の中では、”ちょっと今風の男子には受けないわね”的な表現があるので、アガサはその辺のところを書きたかったのかもしれません。アガサの頭の中にはどなたか実在のモデルがいるのかもしれないと、ちょっと勘ぐりましたね。ミステリーの真相は、、、これはネタバレしたらホントに虚しい話なので、とりあえず物は試しで読んでみましょう!

溺死

この話だけは、『火曜クラブ』から派生した、いわば番外編のようなもの。『火曜クラブ』での話ではなく、その集まりで知り合った前警視総監サー・ヘンリー・クリザリングに、ミス・マープルが助けを求める話です。ある事件とも事故とも言えない出来事について、突然ヘンリーのもとに、マープルが訪れて”犯人はこの紙に書いてあります、どうかお確かめを”というのです。”こんなおばあさんが突然言ったところで世間は信用しませんでしょう?”という具合です。ヘンリーは驚きますがすでに『火曜クラブ』でマープルがとんでもない洞察力を持っていると知っているので、意外な人物が紙に書いてあるので”本当だろうか?”と思いつつもヘンリーは解明に乗り出すのです。

ねじれた家

アガサがノリにノって書いています ★★★★★
後味のビター度          ★★★★☆
最後まで犯人分からない度     ★★★★★
無人島に持っていきたい度     ★★☆☆☆

この作品はポアロなどの有名な探偵は出てきません。ですが、アガサ本人が乗りに乗って書いてたいへんなお気に入りでした。(と言われています)映画化にもなりました。
私もこの作品を読んだ時、アガサの絶好調に楽しそうに書いてる姿が目に浮かびました。それぐらいに面白いです。面白いと言っても事件自体は陰惨でなんとも言えず恐ろしいのですが、作り事の話として、良く書けてるなと思うのです。人間の心理描写も細かいし登場人物が魅力的(登場人物全員が好ましい人物ではないですけど)に書かれていて素晴らしいです。なんと言っても人物の性格の書き分けが素晴らしいです。微妙な表現力、描写が、飽きさせません。
一体この家の何が一番ねじれているのか?最後まで分かりません。

ネタバレなしの紹介
この作品の主人公は、探偵ではありませんが、語り部として大変に魅力的です。アガサの表現の仕方が絶妙なのです。主人公はお金持ちであるアリスタイドの孫娘に恋をして婚約するのですが、そのアリスタイドというのが一癖も二癖もあり一族を敷地内に住まわせ、権力をふるっている高圧的な人物。読み始めてすぐに既にねじれてるというかひねくれてる設定です。アガサはそんな風変わりなお金持ちが一族を支配しているというのを題材に作品を書くことがありますが、この作品もその一つと言えます。アリスタイドの孫娘は”私はそんなねじれた家の人間なのだ”と主人公に言います。この物語はそんなひねくれたアリスタイドが毒殺され、いったい誰が?という犯人探しになりますが、親族も殺したいと思っている人だらけで誰もが犯人らしく思えるのです。物語にまとわりつく、ねちっこい人間模様が不気味で何とも言えません。

この小説が自分は好きですが、作品として好きであって、良筆なミステリーかと言われると、難しいです。結末も含め完全に好みの問題です。実際自分は、面白くて一気にこの作品を読み切りました。ミステリーというよりは、ホラーに近いかもしれません。不気味な雰囲気がまとわりついていて、そういう描き方もアガサは得意だと思います。
読み進むにつれてどんどん、アガサのペンが走っているのが分かります。言い方が難しいけど、この不気味な話を、アガサは多分笑顔で書いています。読者に楽しんでほしいと書いてるのが分かります。そんな作品です。最後はやはり、読者はとんでもなく迷宮に入り込み、裏切られ、してやられた!と思わされるのです。(結局、翻弄されて楽しんでいる自分がやっぱりいます)
自分の好みかどうか別にして文句なく傑作の1つと言えます。(複雑な言い方ですが本心です)

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 20220324_070706-695x1024.jpg


※フジテレビドラマで”元彼の遺言状”綾瀬はるかさん、大泉洋さんでされてますがドラマの中に『ねじれた家』出てきますね。でも原作も読んだんですが、そんなに本筋に直接は関係ないような、、、そもそもドラマの篠田役の大泉さんも随分原作とは違う人物ですから、全然別物として楽しむ内容だと思います