一番好きなポアロものは?(5匹の子豚)

五匹の子豚

ポアロの推理が冴えてる度 ★★★★★
小説に情熱を感じる度   ★★★★★
最高傑作度        ★★★★★
無人島に持っていきたい度 ★★★★★   

ポアロの登場する小説が沢山ある中で、どれが一番好きかと聞かれたら『5匹の子豚』と答えます。
題名こそかわいいですが、内容はがっつり大人向けでございます。
近代化に向かう女性の強さ、若さ、芸術家へのリスペクト、ゴシップ、スキャンダル、母の愛、強い愛、などが詰まっているのである!謎解きもすばらしいのですが、なんといっても登場人物の魅力的な事と言ったら、アガサクリスティーの最高傑作と言ってもいいと思われます。
この作品は自分は何回も読んでいるけれど、映像化した時どんな俳優さんがいいかなあ、なんて思いをめぐらせて読んだりしてるのも楽しかったりします。演じる俳優さん達もきっと楽しいだろうなと思うんですよ!

ネタバレなしの紹介
16年前に有名な画家だった父を殺した容疑で捕まった母、犯人は母しかあり得ない状況がそろっていた。しかし母は最後まで無実を訴え、夫は自殺だったと一貫して言うのである。妹には『あなたは何も心配しなくていいんですよ』という意思と手紙だけ残して病気で獄中でなくなってしまう。当時小さかった娘は何も知らされないまま成長し、大人になってから母の事を知った娘は名探偵ポアロに『母の真実を』(出来れば無実を)と依頼する。
無実を訴える母の気高い姿芸術家の父の狂気の情熱若き美しき愛人、この3人だけでも濃い、良い話が出来そうだがここに加わるのは母の妹夫の兄親友で、母と父は犯人と被害者として亡くなっているので、実際に話を聞ける当時の関係者は当時の愛人を含め5人。これをポアロは五匹の子豚になぞらえて、解決していくのである。
この小説でポアロは、当時の関係者を一人一人訪ね歩いて話を聞き、『もう昔のことだ』という彼ら、彼女から鮮やかに当時の記憶をよみがえらせていく。
アガサクリスティーは何年もたった後の過去の事件を解くミステリーはいくつか書いていて、得意な方だと思う。
人が過去を思い出すとき、都合のいい事、悪い事も一緒に思い出すが、ポアロはそれを聞き逃さない。
何人もの人から話を聞き、他の人の話から矛盾を見つけ出し辻褄を合わすことの組み立てはすばらしい。自分は読んでいてこんがらがりそうになるのだが、最後に鮮やかにすっきり過去のタイムテーブルが合う時、過去の矛盾に読者の自分も気がつくのである。その組み立ても素晴らしいし、この作品はやはり、人物の描写のすばらしさが桁違いに鮮やかだ。魅力的な人物ばかり登場するといったらそれまでだが、この作品はそれぞれが昔の同じ事柄、人物を思い描き同じ時間を思い返すことで、その人なりの想い、感情の書き分けが際立って素晴らしい事が分かる。本当に大好きな作品なので、つい紹介にも力がこもることをお許し願いたい。