青列車の秘密

列車とミステリーの相性はとても良い度     ★★★☆☆
ポアロはこの作品においては完璧過ぎる度    ★★★★☆
恋愛と親子とミステリー度           ★★★★☆
無人島に持って行きたい度           ★☆☆☆☆



ブルーレインでの殺人とルビー盗難事件

ネタバレなしのあらすじ
アメリカの大富豪ルーファス・ヴァン・アルディンの娘ルスが青色列車の中で殺される。ルスは大富豪からもらった大きなルビーを持っていたがそれも消えてなくなる。実はルスは以前、ろくでもない男ローシェと付き合っており、父のルーファスは強引にローシェと別れさせていた過去があったのだが、なんとルーファスに内緒でローシェに会いに行く不倫旅行の途中で殺されたようなのだ。当然容疑者となるがローシェにはアリバイがある。そしてルスは現夫デリクと離婚協議中であり、デリクは離婚しないまま妻が死ねば莫大な遺産が手に入るので、殺す動機がある。
偶然ルスと青色列車に乗り合わせていたポアロは、探偵を高齢のために引退しているが父ルーファスに頼まれ事件解決に乗り出すのだった。



ネタバレ少しあり感想
この作品は映像作品になるべくして書かれたと思えるアガサ作品の一つだと思います。青色列車、ブルートレインの響き、旅路、大富豪、宝石、恋愛、不倫、親子関係、美男美女そしてミステリーとてんこ盛りの内容なのです。
大富豪は娘ルスをとことん甘やかしており、そのあげく、ろくでもない男ローシェにハマり、父ルーファスがやっと別れさせたのにそれでも関係を続けてるというあきれるほど男を見る目がないにもわがまま娘なのであります。その後で結婚したデリクとも当然上手くいくはずがないのです。しかもその夫デリクは一文無しの甲斐性無し。あまり上品と言えない女性と不倫中で、今離婚されたら絶体絶命なのです。本当にルスは男運がありません。しかし、ルスは不倫に向かう列車の中で、一人の女性キャザリン・グレイと逢い、気持ちを落ち着かせます。その矢先にルスは殺されてしまうので、そのつながりからキャザリン・グレイはポアロとともに事件解決の相棒となります。この作品にはヘイスティングズは出てきませんのでこの女性がヘイスティングズの代わりになっているのです。(おそらく作品の順番からしてヘイスティングズはアフリカで新婚生活を送っています)苦労の長年の奉公生活の末に莫大な遺産を手にしているキャザリンには、感情移入が出来るように工夫がされています。遺産を手に入れてから、初めて自分のためにドレスを選ぶシーンは、彼女の賢さ、上品さなどがにじみ出ていて、読者に”よかったね!”と思わせています。この辺アガサは上手いと思います。
この作品で私が気になるのはポアロの”完璧ぶり”です。読者の知らないところでポアロが動いており、ポアロの過去の栄光と人脈で事件が解決したと言っても良いので、ちょっと謎解きとしたらどうかなと思うのです。でも、最初の事件が起こるまでの段階で、全ての主要な登場人物の生い立ちや背景を上手く書いているのでアガサは読者にフェアであろうとしているのが分かります。謎解きが好きな方は油断せずに読んでくださいね!
後はこの作品は男と女のミステリーと言っても良く、察しの良い読者はお分かりかと思いますが、キャザリン・グレイの恋愛とからめて謎解きが進んで行きます。とても面白い作品です。ただ、私はポアロ作品でもっと好きな作品があるので、★は少なめです。
ちなみに、ミスマープルの住んでいるセントメアリーミード村が出てきますので(ミスマープルは出てきませんが)マープル好きな方はニヤッとするでしょう。

※おしらせ
このサイトを新しいサイトに引っ越そうと思っています。
今まで読んでいただいてありがとうございました。

しばらくしたら、このサイトは消えますが
無人島に持って行きたいアガサクリスティーの本として紹介するファンブログはまた、どこかで作るつもりなので”アガサと無人島”で見つけたら私かもしれません。

こちらで同じサイトをしていますhttps://fanblogs.jp/agata5/archive/1/0

こちらからも跳べます

カリブ海の秘密

マープルのかっこよさ   ★★★★☆
マープルの足を痛める度  ★★★★★
ちょっとずるい推理度   ★★★★★
無人島にもって行きたい度 ★★★☆☆

 

ネタバレあまり無しの紹介
アガサクリスティーの作品の中のミスマープルシリーズ
大人気の安楽椅子探偵ミスマープルの長編です
探偵といっても見た目はどこにでもいるようなおばあさんですから周りはその見た目に油断してしまいます
いつも村にいるはずのミスマープルが今回は海外にお出かけをしているところが特別な作品です!
セントメアリー村に住むマープルが甥のデズモンドの好意で南の島へ療養に行くことになるのですが、アガサクリスティーはミスマープルにご褒美のつもりで南の島へ行って欲しかったかもしれません。
お金持ちのリゾート地、カリブ海が舞台でミスマープルが活躍するわけなのでときめかないわけがありませんね

物語は、『人殺しの写真をごらんになりますかな?』といわれてその写真を見せようとしたパルグレイヴ少佐の死から始まります。高齢であること、高血圧だったなどから、病死とかたづけられるのですが、ミスマープルだけは疑問を抱きます。人殺しの写真を見せようとした時に、ミスマープルの肩越しにそっくりな”誰か”を見つけ、マープルにその写真をみせることなく慌てて写真を隠した姿を思い出すからです。

いつものセントメアリー村ならば、親しい警部も警察関係者もいて、協力してくれる人もいるマープルですが、ここは西インド諸島、マープルを知ってる人はいません。カリブ海のホテルに滞在する全ての人が怪しく見える中で、ミスマープルはただ一人調査を始めるのです。
最初は自分の”どこかしら身体の調子が悪い老人”に見えるであろう特性を生かし、人の良いお医者さんを巻き込むところから始めるのも面白いです。
最後には、世界的にお金持ちで有名な、しかし身体が不自由で口うるさい傲慢な年寄りのラフィール氏まで味方につけるという所も面白いです。一人の老婦人でしかないはずのマープルに味方がどんどん増えて行くのです。
(ラフィール氏を気に入ったのか、アガサはまたマープルの長編『復讐の女神』にも登場させてます)

そして余談ですがミスマープルはよく、足を痛めます!
お年寄りの特権と言って良いでしょう(ポジティブに言っています)
マープルもお年なので仕方ないと言えば仕方ないのですがファンとしてはキタキタ!と思います。

推理やトリックについて読者に対してずるいな!と思うところもあるので★は少なめです
読者をだましてるわけではないのですが、語らない事実は存在しないのと同じなので、そこの所をどう捉えるかという所です。
クライマックスはやはり最後の犯人が分かるところですが、この時のマープルの描写がまさに女神様のようで素晴らしいです。

あまりにも印象的なのでアガサはこのマープルが書きたかったので、この作品を書いたのでは?と思ったくらいです。
ラストにこんな粋な演出を用意してるなんて憎いなと思います。
アガサは本当にマープルが好きなんだなと思います。
ぜひ、そこの所も楽しん読んで欲しいと思います。

ポケットにライ麦を

読んでソンはない度   ★★★★★
トリックがすごい度   ★★☆☆☆
ワイドショー度     ★★★★★
マープルの魅力爆発度  ★★★★★
無人島に持っていきたい度★★★☆☆


ミス・マープルが出てくる話です
”ポケットにライ麦を”なんて、かわいい題がついていますが、これは童謡の歌詞の一説です。アガサの作品でマザーグースの歌になぞらえた殺人事件の話『そして誰もいなくなった』がありますが、これも、童謡になぞらえた殺人になります。
牧歌的な歌詞と陰惨な殺人のミスマッチはアガサの得意な分野ですね。
探偵小説というよりミステリーというより最初はワイドショーを見てるような感じがします。ネタバレぎりぎりで言うと
4ページ目で死体が出ます!早いです、展開が早い。金髪の美人秘書、お金持ちの家、会社の社長、お金目当ての後妻、後継者争い、という2時間サスペンスに出てくるようなラインナップ!面白くないわけがありません。
マープルの話といいつつ、マープルが出てくるのは中盤を過ぎてからで、満を持しての登場となりますが、その登場もまたカッコいいのです。

ネタバレなしの紹介


ミスマープルの数ある作品の中でも
今回は犯人に対して最大級の怒りが爆発します!
出社したばかりの大企業の社長がお茶を飲んだとたん死んでしまう。ポケットには何故かライ麦が入っている。若い不倫中の後妻はいるし、息子は罵倒されたばかりだし、怪しいのは家族か身内かに思える。警察が調べているうちに第2、第3の殺人がおきてしまう。
詳しくは言えないですが、その関係者にマープルの知り合いがいて、事件に自ら乗り出してくるのだが、それは本の中盤過ぎてから。それまでは事件のフォステキュー家に住む人物紹介や使用人の紹介などが興味深く書かれていますし、事件のヒントももちろん書かれています。そしてマープルが登場してからまた事件の様子が違ってきます。
人生経験、それは現代のAI技術をもってしてもなかなか測れないもの。そう、マープルのおしゃべりのテンポ、抑揚によって人間の本質を見抜くことは、その辺にいる刑事でも、警部でもできません。そういった意味でもおもしろい。そして、犯人のどうしようもない腐った根性、しかしそんな犯人も人間であり愛というものを知っているのです。現代とはちがって科学的な証拠もそろいにくい時代のミステリーですが、看護師として働いてきたアガサの知識にも裏付けがあって、説得力もあるし、おばあちゃんの知恵袋的な事もふくめ、推理作品だととらわれずに読んでも良かったなと思える作品です。

黄色いアイリス短編集

いろんな探偵ものが読める度★★★★★
アガサの原点かもしれない度★★★★☆
ドラマにしたい度     ★★★★☆
無人島に持っていきたい度 ★★★★☆ 

表題にある『黄色いアイリス』の入った短編集です
9つの短編が収められており、ポアロもの、マープルもの、パーカーパインもの、有名な探偵は出ない話など、混合したバラエティーに富んだ短編集となっています。それはまるでフランス料理の重厚なフルコースというよりは、インドネシアのワンディッシュランチのような楽しさとユニークさです。一つのお皿にナシゴレンやサティやミーゴレン色鮮やかに辛いも甘いも乗っているようなそんなイメージをして頂いたらいいかもしれません。
この短編集の中には長編の原型ではないかと思われる作品がいくつかあります。『黄色いアイリス』が『忘られぬ死』の原型ではないかというのは有名な話ですが、それ以外にもいくつかある気がします。これは私だけが思うのかもしれません。是非、読んだ皆様がどう思われるか聞きたいところです。
特殊なのは『帆の暗い鏡の中に』です。有名な探偵が出てこない、不思議な話となっています。不気味な夢を見た気持ちになります。アガサは愛の側面、つまり甘いだけではないという事をこんな風に表現するんだなと思ったのです。アガサを語る時にこれは読んでた方がいい1つかもしれないと思う作品です。


ネタバレなしの紹介


レガッタ・デーの事件★☆☆
パーカー・パインの話。単純にいうと目の前でダイヤがきれいさっぱりに消えてしまう話。そこにいる誰もに身体検査をするのに、出てこない、、、。これは、やはり何かの長編の原型とまではいきませんが、どっかで既視感の有る感じです。なんの作品の元になってるのか今後、どこかで紹介する長編ではっきりするかも!(今はまだいいません)


バクダッドの大櫃(おおびつ)の謎★★★
ポアロの話。週刊誌ネタのような”バクダッドの大櫃の謎”という新聞の記事から始まる。異国情緒あふれる飾りのついた(たぶん当時はインテリアとしても使われてたのではなかろうか?)大櫃から大量の血がにじんでいた、その中にはなんと一人の男の死体が!という血生臭い話なのであるが、登場人物の三角関係にメロドラマを思わせる設定です。読んでるだけで、鮮やかな異国の飾りのある大櫃の舞台装置が頭の中で作り出されます。そして、ファアムファタルの存在なくしてはこの作品は意味を成しません!(男性にとって運命、もしくは破滅させる女性の存在)
『スペイン櫃の秘密』とほぼ同じ話です。(『クリスマスプティングの冒険』短編集に収録)


あなたの庭はどんな庭?★★☆
ポアロに切羽詰まった依頼の手紙が届くことから始まる。ポアロは依頼を受ける手紙を出すのであるが着くかつかないかで、実は依頼主が亡くなってしまう。依頼主が亡くなったので依頼の話はなかったことに、という断りの手紙が届くのにも関わらずポアロはいけしゃあしゃあとその家庭に乗り込んで謎を解いていくという話。しかし、理不尽な”死”に対してポアロは容赦しません。

ポリェンサ海岸の事件★☆☆
パーカー・パインのお話。ポアロが刑事事件を取り扱うとするならば、パーカー・パインはどちらかというと民事事件を扱う探偵といったところでしょうか。今、現在不幸な依頼者を幸せに導く探偵です。今回は海辺のリゾート地を舞台に”ユニークな方法で事件”を解決します。このパーカー・パインものは仲間がいてその仲間が非常に優秀です。どうやったらそんな人材が集まるんでしょう、、、、等と毎回思います。それも含めてユニークな作品です。

黄色いアイリス★★☆
この短編集の表題になってる作品。長編『忘られぬ死』の原型です。これに関していえば前回別に解説していますのでそちらを読んでいただけたら、ありがたいです。ポアロが珍しく妖艶な美女と絡みますよ!と言ったら誤解をさせるかもしれませんね。でもそんなご褒美もたまにはアガサは書くのだなって思います。

ミス・マープルの思い出話★★☆
話を座って聞いてるだけで、事件を論理立てて解決に導く”おばあさん”の話。つまりミス・マープルの話ですが、有罪確定と言われた知り合いの友人を救うのですが、現場に足を運んだりしないで、今までの人生経験と人間観察を武器として真犯人とその方法を導くのです。ネタバレになるので詳しくは書けないですが、男性は服装などに対してあんまり違いを見いだせないんだな、とアガサはそこを歯がゆく思ってたかもしれません。それを逆手に取ったトリックになります。妻殺しの罪で絞首刑確定の容疑者から話を聞くだけで瞬く間に解決するのですからすごい話です。ですからそんなスゴイ思い出話を甥のレイモンドに話す形になりますがそれはシレッと自慢話にもなりますね。町医者と、最先端の大病院の医者との比較をしてる所なんてマープル自身も恥ずかしそうにしてはいますがまんざらでもなさそうです。

仄暗い鏡の中に★★★
この話は有名な探偵が出てこないお話です。しかし、私はこの話に魅力を感じます。不思議だし、ちょっと考えたら不気味で狂気でしかない気もします。改めて読み返すと、、、読み返すたびに妙な何とも言えない怖さがありアガサの違った作品の楽しみ方が出来るのではないでしょうか。

船上の怪事件★☆☆
船の旅を楽しむポアロだったが、そこに事件が、、、という話。このお話はどことなく『アレとアレを組み合わせたような話』だなって思います。設定が『ナイルに死す』ぽいなと思うんです。(”ナイルに死す”を読んで短編を思い出したと以前書いたのですが、このお話でした!)サクッと読めます

二度目のゴング★☆☆
ポアロが依頼を受けて、その館に来てみれば、そのほんの15分前に依頼主が自殺しちゃってるっていうトンでもない話。当然自殺ではありません。お金持ちの家のルールはいろいろあるんでしょうが、ゴングが鳴ったら全員食卓を囲むとか、そういう食事のルールが出てきます。それが事件解決の糸口にもなります。ちなみに受けた依頼の内容は横領事件なのですが、その横領事件も一緒に解決してしまいます。その場合、依頼主は亡くなってるしその分の報酬はもらえるのかな?なんてどうでもいい事を考えてしまう自分です。




火曜クラブ

ミス・マープルが分かる度★★★★★
サクッと読める度    ★★★★☆
無人島に持っていきたい度★★★☆☆



これはミス・マープルの短編集です
安楽椅子探偵として有名な探偵ミス・マープルの短編集といった方が分かりやすいかもしれません。
ミス・マープルというと、アガサの作品の中でも、ポアロと並んで人気の探偵です。最初の登場は、短編でした。
それがこの『火曜クラブ』です。13篇のマープルだらけのお話です。
このブログの中で、”クリスティ短編集Ⅰ”の中の5編と重複しているお話がありますので、それについては割愛しています。

アガサはマープルの事をご自分の祖母に似てると言っています。ポアロよりも、好きな登場人物だったらしいことも。
自分も小学生のころから、ミス・マープルを読んで、人生について、人間性について、柔らかく話すマープルの様子に親しみやすさを感じていました。”さっきから聞いてますとね、誰と村の誰が似ていて、大抵どこでも人間性ってのは変わらないもので、、、あら、網目がここで、、、そうそう、なんのお話だったからかしら、でも本当のところ、さっきの話を聞いていますとね、村のトラウトおばあさんの事を思い出しましたのよ”とそんな感じです。本当に実在のおばあさんがしゃべっているようです。最初は、まどろっこしく聞こえますが最後には鮮やかに謎が解けます。それで、その場にいた人たちがだんだんミス・マープルに一目置くようになり、この火曜クラブを読み終わるころには、大抵の人がマープルのファンになるという訳です。


この『火曜クラブ』というのは、ミス・マープルの甥のレイモンド、その知り合いの警察関係や友人の画家など様々な職業の人々がたまたま、ミス・メープルの家に集まっていたのが火曜日だったことに由来します。余興として”各自が真相を知っている実在の事件をかたり、皆で推理し合うというゲームをするのです。最初は、ミス・マープルの事を皆が”静かなおばあさん”という外見にとらわれて、マープルなしで話を進めようとするのですが、ひとたび推理を始めれば瞬く間に事件の真相を解いてしまうので、みるみる一目置かれるようになります。
アガサの作品ではありませんが、アイザック・アシモフという作家の作品の『黒後家蜘蛛の会』の給仕のヘンリー
もこのような人物です。興味がればそちらも読んでみても面白いかと思います。


ネタバレなしのそれぞれの紹介



※新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複している者については割愛しています。

『火曜クラブ』
新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複”火曜の夜の集い”と同じ話

『アスタルテの祠』

新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複”アスタ―ティーの神殿”と同じ話

『金塊事件』

新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複

『舗道の血管』

新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複

『動機対機会』

新潮文庫のアガサクリスティー短編集Ⅰの中にも重複
ここまでの5編は、以前紹介したアガサクリスティー短編集Ⅰの中に収められていますので、(しつこくてすみません)そちらを参考にしてみてください!

聖ペテロの指のあと
これは、ダイイングメッセージにヒントがあります。そこにマープルが気がつくところが重要なお話。マープル作品ではないですが同じようなダイイングメッセージが重要な作品は他でも見ますね。謎解きとしては英語が得意でなければそもそも解けないかもしれないです。(赤川次郎先生の三毛猫ホームズでも似たような謎解きがありますね)

青いゼラニウム

トリックが重要な作品です。壁紙の花がいつのまにか変化するトリックです。そして思いもかけない犯人が出てきます。

二人の老婆

いかにも、映像化できそうな、ドラマ化できそうな作品です。日本では横溝正史の双子の老婆が出てくるお話が有名かと思いますが、それを思い出さないでもありません。内容はまったく違いますが。男性は、老婆に対して、ひとくくりに見ていて個性をあんまり感じてないんだなとアガサも感じていたようですね。



四人の容疑者

手紙のトリックです。話の本筋は不気味なんですが(詳しくはこれ以上言いませんが)容疑者四人の中で誰がどうなのか?と考えるのが興味深い作品です。


クリスマスの悲劇

このお話はいよいよミス・マープルが出題者となるお話です。マープルの体験談です。事件を語る様子に、そして真相を語る様子に、マープルの性格がよくでている作品だと思います。




毒草

このお話は、語り部が非常に口下手であるという設定になっているので読んでいて、非常にまどろっこしいです。しかしそれで、かえって『火曜クラブ』が実在するかのような気持ちになります。口下手な語り部から少しずつ事実が見えてくる中で、人物像に色がついて、表情が見えて事件の真相にたどり着くという事になりますが、解決に導くのはやはりマープル。人間性を語らせたらミス・マープルにかなう人はいません。そんなお話です。

バンガロー事件

語り部が美女で有名な女優ジェーン・ヘリアのミステリー。『火曜クラブ』の参加者の中で、いろんな意味でざわつくほどの、美女なんですが自分を賢そうに見せようとはちっとも思っていない。誤解されることを覚悟して言うと、”殿方って頭のゆるい美女がお好きでしょ?”って信じて演じてる風でもあります。(ほんとはどうか分からない)このころの女優さんてこういう方が好まれたんでしょうか。作品の中では、”ちょっと今風の男子には受けないわね”的な表現があるので、アガサはその辺のところを書きたかったのかもしれません。アガサの頭の中にはどなたか実在のモデルがいるのかもしれないと、ちょっと勘ぐりましたね。ミステリーの真相は、、、これはネタバレしたらホントに虚しい話なので、とりあえず物は試しで読んでみましょう!

溺死

この話だけは、『火曜クラブ』から派生した、いわば番外編のようなもの。『火曜クラブ』での話ではなく、その集まりで知り合った前警視総監サー・ヘンリー・クリザリングに、ミス・マープルが助けを求める話です。ある事件とも事故とも言えない出来事について、突然ヘンリーのもとに、マープルが訪れて”犯人はこの紙に書いてあります、どうかお確かめを”というのです。”こんなおばあさんが突然言ったところで世間は信用しませんでしょう?”という具合です。ヘンリーは驚きますがすでに『火曜クラブ』でマープルがとんでもない洞察力を持っていると知っているので、意外な人物が紙に書いてあるので”本当だろうか?”と思いつつもヘンリーは解明に乗り出すのです。

クリスティ短編集Ⅰ


バラエティーに富んで楽しめる度★★★★★
スターがそろい踏み度     ★★★★★
無人島に持っていきたい度   ★★★☆☆
 
これは早川文庫ではなく新潮文庫になります
13篇の短編が入ってる短編集です。ポアロものが3篇、マープルものが5編、パーカーパインものが3篇、有名な探偵が出てこないけどもとても良質な2編、といったところです。

この短編が好きなのは有名な戯曲『検察側の証人』が入ってる事や自分の大好きな短編の『うぐいす荘』が冒頭に入ってる事です。なるべくネタバレをせずにこの短編集を紹介していきます


検察側の証人★★★
自分は幸運にも小説を読んだ後でBBCドラマを見たのです。小説を読んだときの驚きを単純に楽しめたのです。ドラマになると、やっぱりいろいろ道徳面でというか問題があるんだろうなと思いました。舞台で何度もされてる作品だし、言いたいことはひとつ”検察側の証人”であるその人がすべて。後は、主人公のように翻弄されるのを楽しむのが良いかと思います!

うぐいす荘★★★
早川文庫の『ナイチンゲール荘』と同じお話です。出版社と題名と訳者の違いでしょう。自分はこの作品が好きなので別で詳しく書いています。よろしければそちらも読んでみてください。



エジプト墓地の冒険★★☆
ポアロの短編です。ポアロの相棒、ヘイスティングㇲの語りが重要な短編です。事件解決のためにエジプトに1週間もかけて行ってしまうし、しかも意外とお洒落さんのポアロは、ピカピカの磨かれた靴が砂まみれ、ほこりまみれになるのも厭わずに神秘で不気味な謎に挑みます。これも意外な結末です。


ダヴェンハイム氏の失踪★☆☆
銀行の頭取が失踪した事件を、ポアロの旧友のジャップ警部から聞き、解決できるか賭けをするお話。解決のトリックがシンプルというのもありますが、それよりも、自分としては銀行の頭取とはいえ、中年男性が行方不明になるなんて、ちっともわくわくしない設定で、びっくりしました。ジャップ警部との賭けはどうなるのか?それを自分は楽しんだ作品です。

イタリア貴族の怪死★☆☆
食事をしていたとされる3人の紳士のうち1人が死体で発見される。後の2人は見つからない。一体誰と食事をしていたのか?事細かな食事の内容が語られて、アガサはグルメなんだろうなと思わされるし、それを楽しんで書いたのではないかと思われます。お米のスフレもデザートとして出てきて、事件の鍵を握っています。

火曜日の夜のつどい★★★
安楽椅子探偵として代表といわれるジェーンマープルの出てくる話です。”火曜クラブ”の最初の話になります。”火曜クラブ”というのは、ジェーンマープルの甥の作家のレイモンド・ウエストが発起人となって、とその親戚や仲間たちで謎解きをしようという”集い”のことです。ミスマープルは、甥のレイモンド・ウエストや他の参加者にとっては最初”単なる編み物をしている、ごく単純なよくあるおばあさん”とみられていて、謎解きの仲間にも無視されています。しかし、話を聞いてるだけのはずの、ごく普通のおばあさまに見えるジェーンマープルが謎を鮮やかに解いていくことで、誰からも称賛を得るというお話になっています。その記念すべき第一話となります。詳しい内容は第一話という事で敢えて言わないでおきましょう。アイザック・アシモフの書いた推理小説(短編集です)『黒後家蜘蛛の会』というシリーズがありますが、その給仕のヘンリーに当たるのがミスマープル、という構図になっています。気になる方はそちらも読んで見られてはどうでしょうか。

アスタ―ティーの神殿★☆☆
これも火曜クラブの続きになります。第一話で、ミスマープルは鮮やかに謎を解いているので、すでに皆から一目おかれている状態です。そしてこの”アスタ―ティーの神殿”というお話はイギリスの方ならば誰でも知っているというような神話が出てくるので、その神話を知っていなければ、謎を解くのは難しい。日本でいえば、日本昔はなしの”ももたろう”とかそんな感じでしょうか。ある意味女性が好みそうな神秘的な雰囲気のものです。もちろん、ミスマープルが最後には謎を解き明かします。

金塊事件★☆☆
これも火曜クラブの話になります。これはミスマープルの甥のレイモンドのかかわった話を自ら謎として、解決を提案する話。このお話はミスマープルのセリフで”おまえはロマンチックなんだよ”と甥のレイモンドに言うところがありますが、なるほど、そんな感じの話です。男のロマンとかそんな感じかもしれません。

舗道の血痕★★☆
これも火曜クラブのお話。話し方の工夫が必要になってくる謎です。舗道に血痕があったはずなのに、後で見た時にはすでに血痕はなくなってるという不気味な雰囲気が事件を予見させます。しかし話し手のとりとめのない話し方のためにややこしくなっている気がします。ちょっとずるいなと思わないでもない事件ですが、謎を解いた後でもちょっと不気味な気がするのは実際ありそうな話だからでしょうか?

動機対機会★☆☆
そしてこれも火曜クラブの話。遺言書のサインのお話。トリックは実に簡単。ミステリーの内容が”殺人”ではないせいか小学生向けのミステリーの本にもよくなっていました。しかし、トリックはちょっとずるい気がしますね。どうしてかというと、、、、それはお読みになった方が良いでしょう。

中年の人妻の事件★★☆
”あなたは幸福ですか?もし幸福でなかったらパーカーパイン氏に相談に来なさい”という怪しげな新聞広告から始まるストーリーです。パーカーパインは、アガサの小説の短編シリーズの探偵の1人でもあります。人生の悩みを依頼人から聞き、その悩みの本質を、人間の性を読み取り依頼人の幸福を取り戻す話です。ミステリーでもトリックのある話でもありませんがこれは中年の人妻の悩みにとって、最高に幸福になれる物語でしょう!後は読んでのお楽しみに!

悩める淑女の事件★★☆
これもパーカーパイン氏の話。これは宝石が出てくるお話。どうやって依頼人の悩みを解決するのかなと思っていると”なるほど、こうくるか!”と読者をすがすがしく(?)裏切る話です。(褒めています)

あるサラリーマンの冒険★☆☆
パーカーパインの話。そしてこの短編集の最後を締めるものがたりとなっています。これもミステリーというカテゴリーには入らないかも。まじめに働いてきたサラリーマンに裏切らない”幸福”を考えてくれるパーカーパインの温かさがあります。そしてこれを書いたアガサの”男の人ってこういう夢があるんでしょ?”って見透かしたような、でも楽しい作品となっています。