鳩のなかの猫

アガサクリスティーの視野の広さ度  ★★★★★
学校経営の面白さ度         ★★★★★
教育とは何か            ★★★★☆
ただのミステリーではありません度  ★★★★★
とにかく女は膝は大事なのね度    ★★★☆☆
無人島に持っていきたい度      ★★☆☆☆

ネタバレなしの紹介
この作品の中心はメドウバンクという有名お金持ち女学校です。イギリスの学校は全寮制というのはハリーポッターで有名ですが、そんな全寮制の学校が舞台の作品です。そういうと、学園モノで学園ミステリーなのか?と簡単にくくりたくなりますが、そう簡単な作品ではありません。なぜなら、冒頭に革命テロなど血なまぐさいシーンがいきなり出てくるからで革命的な方向と女学校を絡めとてもスリリングな作品になっています。これは誤解されないように言うのは難しいけれど男子校が舞台では又違う話になってしまうでしょう。
私が面白い、と思ったのはミステリー自体も独特で新鮮ですが女学校の考え方を校長先生であるバルストロードが痛快に理想をもって経営している所でした。今まで学校を”経営”としての観点から考えたことがなかったのでとても新鮮に感じたし、学生時代に戻ってこの学校で学んでみたいと思う校風がありました。言い方が難しいけれど、花嫁学校ではありません。この言い方はもう古いですよね、でもこの時代はまだこの考え方があった頃だと思います。現代に学ぶべき学校の本質を突いているので読んでいてワクワクします。ミステリーなのに、その背景の女学校自体がもう面白いのです。
そんな女学校で起こってしまう殺人事件は、学校長を悩ませます。普通なら殺人事件が起こった学校などとんでもないことでつぶれてもおかしくない所ですが、肝がすわっているこのバルストロード校長は考え方が斬新で世間をよく知っていてピンチをチャンスに変える考え方が出来る人に書かれています。この人の魅力にポアロも協力を惜しまないであろう、と想像出来ます。
大人になりきらない女性の、ちょうど微妙な時期を上手く書いています。イギリスの少女は、アジアの女性よりも幼い、と表現しそこが推理の重要な事柄でもあります。多分アジアの女性の方が結婚してしまう時期が早かった頃の名残なのかなと思いますし、とてもその表現はアジア圏でも生活したことがあるアガサならではの表現かなとも思います。
大部分が女学校が舞台ですから、それに伴い、女学生や女性教師いろんな女性の生き方が出てきます。戦後の影響もあり女スパイの話も出てきます。アガサの時代は戦争の背景が色濃く、リアルに女性の仕事としてあったんだろうなと思うのです。作り話でなく、戦争とはそういうものなのかと考えさせられます。

ネタバレちょっとありの紹介
この作品は有名女学校で起こる連続殺事件です。なぜか室内競技場(体育館のようなものでしょう)で殺人が起こることが事件のカギになります。そして、そこへ唯一の男と言って良いのですが男前の庭師が入り込みます。年配の庭師であれば問題はないのですが、女性の園に男前の若い男の庭師というのは怪しさ満点です。この作品の映像化の時は是非ともキャスティングに力を入れていただきたく思います。(これはアガサが映像化の時にお楽しみがあった方がいいと思った為ではなかろうかと思いましたが)
最大のヒントとしたら以前にアガサが書いた『茶色い服の男』のトリックが出てきます。でもそれが分かったからと言って、このミステリーの面白さは変わりませんので、興味がある方は読んでみてはいかがでしょうか。
そして肝心のポアロなのですが、この作品においてはポアロは後半からしかでてきません。ほぼ、女性が主人公と言ってもいいくらい、魅力的な女性陣が出てきます。アガサの脳みそは”女性脳””男性脳”の区別を超えているのかもしれません。女性の身体の一部(膝)に非常に関心があるようで、その表現は他の作品でも出てきます。
ポアロが登場すると驚きの展開とともに一気に解決となります。ここの展開の仕方は非常に面白いなと思います。
殺人事件は陰惨なのですが、それでも精一杯のハッピーエンドを用意しています。ここはアガサの上手いところかなと思います。

ゴルフ場殺人事件

アガサの若々しい作品       ★★★★★
ヘイスティングズの惚れっぽさ度  ★★★★★
ポアロの推理が冴えてる度     ★★★☆☆
警察を出し抜く度         ★★★☆☆
無人島に持っていきたい度     ★★★☆☆


ネタバレなしの紹介
このお話は、ポアロの第2弾になります
『スタイルズ荘の殺人』でポアロが鮮烈デビューをした次の作品なので、アガサの文章も若々しさに溢れています。
あらすじは
あるとき富豪のルノール氏から南米の仕事上のトラブルで脅迫を受けているとポアロは依頼を受け、この男の家にいくのですが、そのルノール氏の家に行くとすでにその富豪は死んでしまっていたという不本意な始まりです。
しかもゴルフ場のバンカーの穴に入っているという状態で見つかるので”ゴルフ場殺人事件”なのです
家で縛られて生き残っていたエロイーズ夫人の話によると南米からの不審者が2人訪問し、ルノール氏は連れ出されてしまい殺されてしまったらしいのです。
当然事件解明に乗り出すポアロなのですが、よそから来た探偵のポアロを良く思っていない地元警察と確執が生まれます。
ポアロ対地元刑事のジロー刑事との推理合戦もこの小説を面白くさせています。

しかし、そもそも、このお話の最初が
”シンデレラ”と名乗る魅力的な女性が登場し、ヘイスティングズと出会うところからお話が始まるので、なんてロマンチックな恋愛ドラマが始まるんだろうという感じなのです。(もちろんこの女性も事件に大いに関係してきます)
ポアロと訪れたルノアール宅のとなりの美女にも好意を抱きますし、なんてヘイスティングズは惚れっぽいんだろうと思います。なので読み始めた私は戸惑いました。
それくらいヘイスティングズが恋に墜ちる描写が若い感性で書かれていて、あまりに惚れっぽくて推理小説になるんだろうかと心配するくらいです。恋するが故、事件を引っかき回すしポアロの邪魔もしまくります。中学生の初恋じゃあるまいし一体何歳の設定なのかと思うんですが恋愛に歳は関係ないですね。しかし初恋物語かと勘違いしそうです。
でもちゃんと推理小説になっています。

ネタバレちょっとあり
この作品の面白いところは、南米から来たと思われる人物が犯人らしく単純に思われるけども、そう単純ではないところです。複雑に丁寧に過去に起こった事件との絡みを旨く組み合わせているところです。コレはちょっと難しいなと思う事件です。
そしてエロイーズ夫人とおとなりのドーブルーユ夫人が事件のカギですがどちらも強い特徴があります。
男を愛し、そしてお金を愛する女性。両方欲しいのが人間なんでしょうけどもなかなか割り切れるモノではないと思うのです。
結局は愛の為に罪を犯し自分の欲望のために犯罪に手を染めるのですが、どっちがどっちとは言えませんが、どちらの女性も強いです。それだけは言っておきます。
ポアロの推理は冴えています。ただ時代的に可能な犯罪なだけで、現代では通用しない犯罪かなと思います。その辺は推理小説と割り切って楽しみたいと思います。

ところでゴルフ場で死体が見つかっただけで、特にゴルフをするシーンとかでてきません。
そもそもポアロはゴルフが嫌いなんじゃないでしょうか?(言い過ぎかも)ゴルフに関して全く関心ある描写がありません。ヘイスティングズはたしなむようですが。
そしてアガサの小説は題名が凝っているイメージがあると思うのですが、この『ゴルフ場殺人事件』は『そして誰もいなくなった』『ABC殺人事件』に比べれば印象は残らないですね。それが残念と言えばそこだけ残念な作品です。
この小説のヘイスティングズの描き方を見て、アガサはこの段階ではまだ名探偵ポアロをシリーズ化にするつもりはなかったんじゃないかとさえ思います。

葬儀を終えて


斬新な切り口のミステリー度  ★★★★☆
人物のユニークな描写度    ★★★☆☆
遺産相続への興味惹かれる度  ★★★☆☆
犯人への共感度        ★★★☆☆
無人島に持っていきたい度   ★☆☆☆☆

ネタばれなしの紹介
お葬式が終わるところからこの作品は始まります。
亡くなったのは薬で財をもうけたお金持ちのリチャードです。
唯一の子どもは先に亡くなっているので、遺産は兄弟姉妹、親戚などリチャードが残した遺言書にならって分けることになります。

何も不審な点がなかったリチャードの死ですが
葬儀に出席した妹コーラの『だって、リチャードは殺されたんでしょう?』の一言ですべてがひっくり返ります。
コーラは昔から天真爛漫な性格で言って良いことと悪いことの区別がつかない所があり、皆が隠したがる秘密を言い当てるような所も多分にあったため、葬儀に集まった皆はその言葉の真意を計り知れないまま家路につくことになります。
そしてその言葉を言い放ったコーラは家に帰った後、誰かの手によって惨殺されるのです。
コーラがあきらかに他殺であることにより、コーラが言い残した『だって、リチャードは殺されたんでしょう?』の戯れ言がクローズアップされてきます。

葬儀に居合わせ、そのコーラの一言を聞いた全員に疑いかかかるのも無理はありません。
もしくは全然関係のない殺人なのか?
遺産相続の泥沼な争いもからめて、殺人の動機は誰にでも充分にあるのです。
ポアロは遺産管理者の一人に依頼されて真相を探ることになります。

ネタバレちょっとありの感想
遺産相続は自分にとってはまだあんまりピンと来てないので、アガサクリスティーの小説に出てくると本当に他人事なんです。ですから楽しんで読める、と言うのもあるのかもしれません。
そういう意味で私は楽しめました。
後はコーラという人の人物描写が絶妙です。最初の被害者であるコーラの描写が一番重要だからです。
コーラが『だって、リチャードは殺されたんでしょう?』と言ったのでなければ、ここまで事件にならず問題にならなかったでしょう。しかし、このコーラは残念ながら兄弟姉妹親戚共に好かれてはいない、疎遠な関係であることを冒頭にアガサは上手に書き示しています。本当に上手い書き方だな、と思います。それによって読み手も真実はどうだったのかと好奇心が止まらなくなります。
犯人は私にとっては意外ではなかったのですが、動機が全く分からなかった作品です。
人によっては、犯人に対して全く共感をしないでしょう。しかし、私は同情はしないけど、共感は出来ました。動機に対してではなくて、コーラ(に似てるタイプと接する)に対しての感情も心の奥底にあったのかなと、ちょっと感じたりしたのです。誤解されると悲しいので、いつか完全ネタバレも書くつもりでいるので、その時にその感情は書きたいなと思っています。
そして一点、この作品の中に、他の作品の重要なシュチュエーションを彷彿とさせる場面が出てきます。コレは私だけが感じることかもしれませんが”多分コレはアノ作品のアノ場面にしてるな”と思う部分があります。ネタバレのなる可能性があるので、ここでは言いたいけど言いません。ヒントはこの作品以降に書かれる作品の中にあります。読まれる方は、そこの所も感じながら読んでみるのも面白いかもしれません。

作品順についてはこちらを参考にしてみてください↓

茶色の服の男

アガサの作品の中で一番アクティブな女性が出てくる度 ★★★★★
勇気がもらえる度                  ★★★★★
冒険を忘れた人に読んで欲しい度           ★★★☆☆
ミステリー度                    ★★☆☆☆
無人島に持っていきたい度              ★★☆☆☆

ネタばれなしの紹介
この作品は、探偵物ではありません。ポアロもマープルもアガサクリスティーの作品で有名な探偵が出てきません。
たった一人の女の子が冒険を繰り広げる物語です。
言うなれば、冒険活劇というジャンルに近いかもしれません。
そういうとミステリーでは無いように思いますが、それが絶妙に推理小説となり得るギリギリのところで書いてある作品なのです。

偶然にあるショッキングな列車事故(と言っておきます)に遭遇しそれが殺人と絡むことで始まることになりますが、そもそも主人公のアンが、若き女性でたった一人の身内の父親が亡くなったことから始まります。
父親が死んで天涯孤独でしょんぼりしてるかと思うとそうではありません。自由になったとばかり孤独な少女が一人で羽ばたくのです。少しばかり残してくれた遺産を手に向こう見ずで自信家で、、、自分の若さを肯定しているこの少女には驚くほど行動力だけがあります。逆に言えば、一人の少女に行動力を起こさせる事に矛盾を感じさせない工夫をアガサクリスティーはしていますし、そのアイデアは一体どこから思い付くのだろうと思います。

それにしても『茶色の服の男』という題名は、私には本の中身を考えると随分”らしくない”題名だなと思います。アガサクリスティーと言えば、『そして誰もいなくなった』『ABC殺人事件』『カーテン』などちょっと凝った感じの題名を付け、読んだ後に”ああ、そうか”と思う物が多いのですが、この『茶色の服の男』は、本の中身のアクティブさ冒険活劇の様子を考えると思ったよりおとなしい題だなあと今でも思います。実際、この題名のせいで私はアガサの作品の中でも随分遅くに読むことになりました。茶色の服の男って言われても、全然ときめかない題名だなあと今でも思います。あくまでも私の感性なので、申し訳ありません。でも、読んでみると内容は素晴らしくアグレッシブで冒険、スリル、恋愛、ゴージャスな内容でした。
『茶色の服の男』なんてたいしたことないのでは?と思ってた私はまんまと裏切られました。

映画化してみたら面白い作品だなと思いますね。主人公の女の子がとてもチャーミングに書かれているので足が奇麗な女優さんに是非演じていただきたい、なんて思います。(何故足が奇麗と言うのかは、是非本を読んでいただきたいと思います)
もっともアガサは自分の作品が映画化されることがあまり好きではなかったと聞いていますが。
そして 女の子というのはどうして危険な男に惹かれてしまうのでしょうか
アガサは恋にのめり込む若さも危険も充分に書き分けていて、冒険シーンもさることながら本当に若々しい作品となっています

そしてこの作品は後にポアロの推理小説のヒントとなる事柄というか仕掛けが出てくるそうなのですが、アガサファンでポアロファンならその作品がどれかというのはすぐ分かるでしょう!
自慢じゃないですが、私はすぐに分かりました
皆様も、どの作品がそうなのか挑戦して読んでみてはいかがでしょうか

    

象は忘れない

アガサファンなら読んでおきたい度    ★★★★★
ポアロファンなら読んでおきたい度    ★★★★★
大逆転度                ★★☆☆☆
無人島に持ってきたい度         ★★★☆☆ 

実は私が一番最後に紹介したかった作品です
なぜならアガサが書いたポアロものの本当に最後の作品だからです
チョット詳しい方ならポアロの最後の作品と言ったら『カーテン』じゃないのって言われるかも知れません
アガサの死後に発表するよう遺言され、その通りに世間に発表された作品は確かに『カーテン』です
詳しくはいつか「カーテン」を紹介したときにしたいと思いますが、とにかく実際にポアロもので「カーテン」後に書かれたのはこの『象は忘れない』なのです
なので、作中に昔に解いてきた、過去に遡って解決する『5匹の子豚』とか『ひらいたトランプ』とか他にもそんな作品名が出てきて、読みながらああ、本当にコレはアガサのポアロの最後の作品なのかとしみじみ思います
(今回紹介に至ったのは、世界情勢でのいろいろや災害いろんなことが起こるので、明日を後悔しないように、紹介したい作品を早めにしておこうと思った次第です、、、おおげさですけどね!)

過去の事件を掘り起こして真相にたどり着くポアロお得意の回顧推理ストーリーです
過去の事件自体は悲惨で悲しいのですが作品の構成はとても粋な作品です
ポアロの友人小説家のオリヴァが受けた依頼が発端で、過去の事件の真相を暴いていきますがオリヴァ自身もあちこち話を聞きに行く活躍ぶりです
その報告をもとにポアロは順序立て、真相を組み立てていきます
友人で小説家のオリヴァは、売れっ子でまるでアガサの分身のようです
有名人としてパーティーに呼ばれて行くことの滑稽さや“ファンです”と言われることの苦痛なども書いていて、この作品はその気の進まない催しの描写などから始まります
アガサもそんな気の進まないパーティーに出ていたのかもと思ったりして面白いです
この本の題名”象は忘れない”は”象は決して過去の事を忘れない”親切にしてくれた人の顔も、危害を加えた人の事も全て覚えている、その象の特性をアガサ自身も気に入っていたのでしょう
関係者の過去を思い出を『象』と名付けて“象をさがしに言ってくるわ”とオリヴァに言わせながらユーモアにして捜査に出かけていくことから題名が付いています
頻繁に”象”という言葉が出てきますが実際に本物の象は出てきません

トリックとしては、難しくはないです。今となってはミステリー好きなら思い付くネタかもと思わないでもないですし、トリックというよりは人間関係、動機は何かという謎解きになると思います。ちょっと感傷的な作品です
なので自分としては無人島まではもって行くにはちょっと湿っぽいなという感じです
いつも強気なポアロが自分はすでに過去の探偵なんだと自覚しているようなシーンもあって切ないです
自分の灰色の脳細胞に絶対的な自信のある傲慢気味なポアロがですよ?今まであり得なかった事です
対比として未来に生きる若い人間のたくましさを書いているのも、アガサ的に最後のポアロ作品『カーテン』の後の作品らしいと言えばらしいです。
作品の中に重要なアイテムの住所録が出て来るのですが、その年代別の住所録の年代のままに作品も書かれているのを知った時、直接事件のトリックとは関係ないですがアガサが生きていた時代をリアルに感じることが出来て興味深いと思います
最後のオリヴァの台詞を読み終えたとき、アガサはこの一言が最後にいいたかったのかなとハッとします

作品のあらすじ
小説家のオリヴァはあるパーティーの最中、一人の女性に頼み事をされます
以前オリヴァが名付け親になった女性がうちの息子と結婚する予定だが、その女性の親が過去に謎の心中事件を起こしている。男親の方が母親を殺してから自殺したのか、または逆なのかまたは第3者の殺しの可能性があるのか、それによっては息子の結婚に賛成しかねる、そんな内容です。オリヴァにとったら、過去何人もの名付け親になってるうち一人のことだし、いきなりそんなこと言われたって“いい迷惑”でございます。しかしまるっきり無視も出来ないので、そのパーティーの帰りに、早速ポアロの家に押しかけ(事前に電話するだけマシ)“こんなこと頼まれたのよ!過去の事件を調べるのあなた得意でしょう!”てな具合でまくし立て、ポアロに協力させるのです。遠慮なんてオリヴァに存在しません
ポアロは、その時にはすでに引退状態で、引き受けるギリなんてありませんが、オリヴァはポアロを上手に使うすべを知っています。そんなわけで引き受けたポアロとオリヴァは事件の真相に迫っていくのです

オリヴァに依頼してきた女性にも、秘密があり、ただ息子を心配するだけじゃない”何か”もあぶり出します
依頼主はそこまで暴かれたくなかったでしょうが、ポアロはお構いなしです。
とにかく関係者からの聞き取り、噂話の収集から始まります。過去の話ということもあり、聞く人によって事件の見方が違うことや、同じ家族の印象も違うので、何が本当か分からなくなってきます。それでも、地道に過去の思い出を聞き取りに旅に出るオリヴァとポアロがいて、些細なこと、例えば飼っている犬のことやかつらのことなどから真相が解かれたとき、なるほどなあ、、、と思います



カリブ海の秘密

マープルのかっこよさ   ★★★★☆
マープルの足を痛める度  ★★★★★
ちょっとずるい推理度   ★★★★★
無人島にもって行きたい度 ★★★☆☆

 

ネタバレあまり無しの紹介
アガサクリスティーの作品の中のミスマープルシリーズ
大人気の安楽椅子探偵ミスマープルの長編です
探偵といっても見た目はどこにでもいるようなおばあさんですから周りはその見た目に油断してしまいます
いつも村にいるはずのミスマープルが今回は海外にお出かけをしているところが特別な作品です
セントメアリー村に住むマープルが甥のデズモンドの好意で南の島へ療養に行くことになるのですが、アガサクリスティーはミスマープルにご褒美のつもりで南の島へ行って欲しかったかもしれません。
お金持ちのリゾート地、カリブ海が舞台でミスマープルが活躍するわけなのでときめかないわけがありませんね

物語は、『人殺しの写真をごらんになりますかな?』といわれてその写真を見せようとしたパルグレイヴ少佐の死から始まります。高齢であること、高血圧だったなどから、病死とかたづけられるのですが、ミスマープルだけは疑問を抱きます。人殺しの写真を見せようとした時に、ミスマープルの肩越しにそっくりな”誰か”を見つけ、マープルにその写真をみせることなく慌てて写真を隠した姿を思い出すからです。

いつものセントメアリー村ならば、親しい警部も警察関係者もいて、協力してくれる人もいるマープルですが、ここは西インド諸島、マープルを知ってる人はいません。カリブ海のホテルに滞在する全ての人が怪しく見える中で、ミスマープルはただ一人調査を始めるのです。
最初は自分の”どこかしら身体の調子が悪い老人”に見えるであろう特性を生かし、人の良いお医者さんを巻き込むところから始めるのも面白いです。
最後には、世界的にお金持ちで有名な、しかし身体が不自由で口うるさい傲慢な年寄りのラフィール氏まで味方につけるという所も面白い。一人の老婦人でしかないはずのマープルに味方がどんどん増えて行くのです。
(ラフィール氏を気に入ったのか、アガサはまたマープルの長編『復讐の女神』にも登場させてます)

そして余談ですがミスマープルはよく、足を痛めます!
この作品も傷めてます!

お年もお年なので仕方ないと言えば仕方ないのですがファンとしてはまたなの?
キタキタ!と思います。(心配しなさいよとも思いますが)

推理やトリックについて読者に対してずるいなと思うところもあるので★は少なめです
読者をだましてるわけではないのですが、
語らない事実は存在しないのと同じなので、そこの所をどう捉えるかという所です
クライマックスはやはり最後の犯人が分かるところですが
この時のマープルの描写がまさに女神様のようで素晴らしいです。

あまりにも印象的なのでアガサはこのマープルが書きたかったので、この作品を書いたのでは?と思ったくらいです。
ラストにこんな粋な演出を用意してるなんて憎いなと思います。
アガサは本当にマープルが好きなんだなと思います。
ぜひ、そこの所も楽しん読んで欲しいと思います。

ビッグ4

ポアロとヘイスティングズの友情度  ★★★★☆
他のポアロの探偵小説にはない感じ度 ★★★★☆
あくまで個人的にあわない度     ★★★★★
別の探偵の話なら良いかもしれない  ★★★★☆
無人島に持っていきたい度      ☆☆☆☆☆

本当にこれをアガサが描いたのだろうか?ポアロを主人公にして?というくらい他の作品とテイストが違います。
この作品はアガサの名前を爆発的に(と私は思ってます)世に知らしめた名作(迷作)の『アクロイド殺し』を発表したすぐ後の作品なのです。推理小説界を騒然とさせたすぐ後の作品なので、期待も大きかったと思います。ポアロの作品は、最初の『スタイルズ荘の怪事件』を発表、その後の『秘密機関』とこの『ビッグ4』は少し似ています。本当はこういうスパイを追う的な作品を書きたかったのでしょうか?と思うのですが、間に発表された『ゴルフ場殺人事件』はまた違うテイストで、こっちの方が自分は好みなんですよね。(個人的な好みですみません)
個人的な感想なので、申し訳ないですが、アガサ好きの自分がこの作品は途中で眠気が襲うくらいに、読み終わるのに苦労しました。(ひどい)数年たって、また再度読みました。最初読んだときは自分も幼かったですからね!しかし、やはり再度チャレンジしても読むのにつらいという感情がひしひしと。そして今回、また読み直しましたがやっぱり全然進まない。他の探偵が主人公ならば面白かったかもしれません。
敢えて言うならポアロに冒険とスパイ活劇をさせたかった、そういうことなのだろうと理解します。
東洋のギャングのビッグ4の存在を追う話です。らしくない、灰色の頭脳を使うポアロらしくないんです!(個人的見解)

ネタバレなしの紹介
ヘイスティングズは長年ポアロから離れた暮らしを堪能し、残りの人生を久しぶりに旧友のポアロのもとで過ごそうと思いたち、感動の再開をします。しかし再開したとたん、その矢先に怪しげな男がやってきて、息も絶え絶え倒れ込みます。ある策略によって、ポアロたちがその男から目を離した途端にその男は死を遂げる。そこからはポアロの謎のギャングビッグ4を追い詰め、逆に追い詰められ、という冒険が始まるのです。読者を裏切る仕掛けもあるし、なによりポアロが大変にアクティブで、あっちゃこっちゃ行きます。中国系のマフィア的な”ビッグ4”の首領リー・チャン・エン人物を追い詰めるのですが、、、、という話です。ポアロとヘイスティングズとの友情の証みたいなエピソードも満載だから、それも書きたかったのかなあと思わないでもないです。とにかく、いつものポアロの推理小説とは一味違うテイストな作品だと言うことはお伝えしたいです。(個人的意見です)こういうポアロの一面もあるんだなと思える作品ではあります。無人島に持って聞きたい度が★ゼロなのは、ギャングとの冒険活劇なので、無人島では真逆な感じですごく疲れるかなっていうのと完全に好みの問題です。


スタイルズ荘の怪事件

犯人が一転二転三転する度       ★★★★★
アガサの才能は最初からすごい度    ★★★★☆
ポアロつかみはOK 度          ★★★★★
ヘイティングスおちゃめ度       ★★★★★
無人島に持っていきたい度       ★★☆☆☆ 

アガサの記念すべき推理小説一作目です。
アガサ自身が長く付き合うことになる名探偵ポアロがここでで登場します。
その次に有名なヘイスティングズももちろん出てきます。
ヘイスティングズポアロの友人であり、推理の中で大事なポアロの相棒となります。
この2人の性格と関係性がこの作品を面白くしています。
トリックも、この当時の時代だから成立すると言うこともありますが、看護師の経験があるアガサならではの知識があってこそのしっかりとした小説になってます。


ネタバレなしの紹介

簡単に事件を説明すると

”スタイルズ地方の地主の
奉仕活動家女主人殺人事件”

といったところでしょうか!


傷病兵として休暇中のヘイスティングズが旧友の勧めで実家のあるスタイルズ荘に招かれ、ゆっくりすごそうかと思った矢先に旧友の継母である女主人が毒殺されてしまう。
その犯人探しになりますが、誰もが遺産を巡って動機があって怪しいのです。


読み進めていくと、一転二転して新しい事実がでてくるわ、遺言状は何枚も出てくるし、誰かが誰かをかばっているのか
ややこしい状況も出てきて、いったい誰が犯人か全く分からないのです。


後妻業ならぬ、後夫業的な要素もアリ、不倫もあり、ワイドショーのネタ満載です。
殺された女主人にお世話になったことがあるポアロもたまたまスタイルズ地方を訪れており、必然的に事件解決に乗り出す事になります。


ヘイスティングズの独り言にヒントがあるのですが
基本ポアロの推理のすごさを助長させるだけだったりします
最初から、ヘイスティングズの性格が固まってるので
(女性の好みとか惚れっぽいとか)何回も同シリーズを読んでる私は、最初からヘイスティングズはこんなに惚れっぽいんだ、若いなあってニヤってするところもあります。
アガサはポアロの続き物を書く気はなかったと聞いたことがありますが、この作品で人気になってしまい必然的に書き続けることになる記念すべき作品です。

推理ものとしてとても面白い作品ですが、私的には登場人物、特に殺された女主人に自分は共感を持てないし魅力を感じないので(失礼だな)あんまり好きな作品ではないんです。
私が無人島に持っていく本としては、他のポアロ作品が私は大好きすぎるのです。あくまでも個人的な理由なので★少なめですが、面白い推理小説の1つであることに変わりありません。
ポアロが好きなら是非読んでいただきたい作品です。

杉の柩

愛憎の表現のロマンチック度 ★★★★★
最後のどんでん返し驚き度  ★★★★★
ポアロの冴えわたり度    ★★★★★
無人島に持っていきたい度  ★★★★★


個人的に大好きな作品です!
この作品は主人公はポアロでなければ解けない謎ではないかと思われるくらい、依頼人にとって最初から不利な事件なのです。
小説の最初から、エノリアの有罪が漂っています。被告人エノリアは、お金もあり洗練されている聡明な美女です。そこはまず大事なコトになりますね。彼女には幼い時から決められたロディーという婚約者がいるのですが、実はエノリアはこのロディーをめちゃくちゃに愛しているのです。しかし、いよいよ結婚間際と言う時に若い女に心を奪われる愛しい婚約者!メアリー・ゲラードは使用人の娘なのだが、特別に雇い主によって教育もバッチリ受けて性格も可愛く、容姿もカワイイ。そのメアリーに、愛しい婚約者のロディーが奪われるのだ!もしかしたら財産も!エノリアは表面的に冷静さを装うが心の中は激しい嫉妬がうずまく。そんな時にメアリーが殺されるのである。動機もある、機会もある、そして、なによりエノリアには、被害者を殺したいと思う感情が渦巻いたことをアガサは明確に匂わせ書いているのです。そこに、エノリアに恋する男、ピーター・ロード医師の登場!(エノリアは何とも思ってません、何という事でしょう!)ピーター・ロード医師がエノリアのために有名なポアロに無罪を証明してほしいと依頼することで、小説が推理小説となっていくのです。

まさに、愛の三角関係物語!しかし、ここからがすばらしいミステリーの幕が開きます。
最後の謎解きは裁判形式なのも、珍しいです。アガサの看護師時代の知識も出てきます。
ちょっと最後にバタバタとご都合主義の感じもありますけど、それを吹き飛ばすぐらいの説得力はあります(多分)
自分が感銘を受けたのは、愛に関するうんちくの言葉やセリフの数々。
ポアロは一生独身ですが、愛に関して無知ではありません。(と思われます)
最後のポアロが放つ言葉が、特にかっこよく自分は大好きなのです。
読んで損はありません!

ひらいたトランプ

ゾクゾク度        ★★★★★
数回読んで味を占める度  ★★★★★
設定の面白さ度      ★★★★★
無人島に持っていきたい度 ★★★★★
 
これは、エルキュール・ポアロ作品です。
ひらいたトランプというように、トランプのゲームが出てきてきますが、ババ抜きとかじゃないですよ!この作品は日本人にはなじみのないゲームが出てきます。ルールは分からないけれど、登場人物が熱狂している描写が出てくるので、面白いゲームなんだろうな、と思われます。賭け棒とか出てくるし、麻雀に近いかもしれません。もちろん、そのトランプゲームが、事件の大事な要になってきますが、ルールを知らなくとも楽しめる作品です。”こんなトランプゲームがあるんだな”で、いいので、読み進めて下さい。人間の本質をあぶりだしていく、とてもゾクゾクする作品です。自分はとても好きですね、この作品が。

ネタバレなしの紹介

この作品が他と違っているのは、ここに出てくる登場人物は全員、殺人を犯してる事。でも、法の合間をかいくぐって、誰もなんの刑も受けてはいない。え?ネタバレじゃないの?大丈夫です。そんなことではこの作品は語れません。そんな犯罪者たちをコレクションして楽しんでいる”シャイタナ氏”が一番たちが悪いのですが、、、、というお話。ゲームの様子、やり方には人間性が出るということからのアガサの人間観察の鋭さがすばらしいです。定期的に読みたくなる一冊です。最後の最後まで犯人が分からない、読者を裏切らない面白さがあります。私は何回も読んでますが、結末を知っててもやはり面白いです。