ABC殺人事件

アガサの代表作度   ★★★★★
ABC本の名前の有名度  ★★★★★
アガサの人を観察する度    ★★★★★
コレを読んでおけばミステリーの
世間話が出来るぞ度      ★★★★★ 
無人島に持っていきたい度   ★★☆☆☆


ABC殺人事件と言えばアガサクリスティーの代表作の一つで、その印象的な題名は一度聞いたら忘れる事はないでしょう。日本で言えば”あいうえお”殺人事件みたいな感じでしょうか
殺人現場に残されるABCの本から『ABC殺人事件』と言われるのですが、この本は”鉄道案内のガイドブック”で親切にABCのアルファベット順で地域と駅、時間や金額、近くのホテルや観光場所など詳しく載っていて大変便利だったようです
ミステリー好きであれば、話のネタにも一回は読んでおきたいアガサの超有名作品です


あらすじ
『ABC』と名乗る犯人からの殺害予告がポアロの元に届き、予告通りの日にちと場所、しかも最初の事件がAの付く町で
Aの頭文字の人が殺されてしまいます。その事件が解決しないまま次の殺人予告がまた届き、今度はBの付く町で、Bの頭文字の人が殺されてしまうのです。そしてまたCの町の殺人予告がポアロの元に届く、という連続殺人事件となっています。
殺人現場には『鉄道案内ABC』のガイドブックが必ず置かれているという状況から『ABC殺人事件』と言われるのですが
このセンセーショナルで残忍な事件をポアロがヘイスティングズと解決する作品です

ネタバレなしの紹介
あらすじ
難事件を解決し名探偵として名をあげてきたポアロのもとに殺人予告の手紙が届きます。差出人はタイプライターで打たれた『ABC』とだけ。内容は”Aのつく町で21日に殺人が起こるから警戒せようぬぼれた探偵ポアロよ”(簡単に言うと)と、かなりポアロを煽る感じなのです。この手紙だけでは、いたずらなのかもしれないし、わかりません。事件はそんな奇妙な始まりです


ポアロは探偵も引退していて夢だったカボチャ作りに夢中だったはずなのですが、実のところは、事件の依頼がチラホラあり完全に引退まではしていなかったようです。それどころか難事件を解決してきた自分の灰色の脳細胞を持て余し気味でした。そこへ南アフリカから旧友のヘイスティングズが帰ってきたので(ヘイスティングズは南アフリカに妻を残して来ているので期間は限られているのですが)昔のエキサイティングな事件の事などがよみがえったのでしょう。
”なにか気の利いた事件”をまた二人で解決しよう!と持ちかけます(なんて物騒な話なんでしょう!)その直後に『ABC』の殺人予告の手紙がポアロ宛に届くので、びっくりです
しかも、ご丁寧に殺人の場所と日にちまで書いてあるのです。ポアロも随分軽く見られてしまってたようです!(これは犯人の思惑があったのですが)私はポアロがヘイスティングズに”また何か2人で事件を解決したい”的な事を言った直後の殺人予告の手紙だったので、てっきりヘイスティングズの何かの伏線か、関係があるのかと思ってしまいましたが、実際はそういうわけではなく、たまたまだったようです(すみません、私の考えすぎでした)
最初のポアロと旧友のヘイスティングズの再会は、ポアロファンならニヤニヤするくらいの会話の応酬ですし、直接事件とは関係ないところですが最終回の作品と呼ばれる『カーテン』への伏線もうっすら入っています。『カーテン』を読んでいる方なら、”あ、この会話は!”と気付かれるかと思います

いつもは語り部としてヘイスティングズの目を通して事件を追うのですが、今回の『ABC殺人事件』はある理由から他の視点でも描かれます。これは最後まで読み終わって、ようやくそういうことか!と思います(言いたいけどネタバレなので言いません)ポアロ宛に殺人予告が届くこと、しかし防げずに殺人は次々と起こるので犯人の狙いはポアロに恨みがあると考えるのが話の流れではないでしょうか?散々推理小説を読んできた私は、そう考えもしますが、話はそんな単純ではありませんでした。予告があるのにもかかわらずポアロが手も足も出ず殺人が起こってしまう失態の連続ですし難事件と言っても良いと思います。
ミスリードもありますし素直に読んでいる読者は犯人が誰かさっぱり分からないと思います!犯人捜しは難しかったです
トリックとしては偶然に頼りすぎているので私にとって無人島に持っていくリストには最優先に入れる本ではありませんが、ABC順に殺人が起こるという前代未聞のアイデアはさすがだなと言うしかありません。
最後のポアロの謎解きのシーンはいつもながら大どんでん返しでスカッとします。事件は悲惨ですがハッピーエンドと言っても良いでしょう。(複雑ですが)
そして私のこの作品の大好きなところをあげるとミステリーでありながら①戦争反対の意思、戦争の後遺症の悲惨さ、②弱者への暖かいまなざしを感じられるところ、があります(それを感じられるシーンは少ないけど印象に残ります)もちろん魅力はそれだけではありませんので是非まだの方は読んでいただきたいと思います

映像化も沢山されている『ABC殺人事件』、BBCドラマも映像化をされていますがこのABC殺人事件のドラマ化に関してはとても面白い解釈と表現がされていました
こちらも機会があれば、原作を読んだ後でですが鑑賞をおすすめします(原作を読んでなくても面白いと思いますが、原作を読んでいた方がドラマの面白さは増えるかなと私は思いました)









鳩のなかの猫

アガサクリスティーの視野の広さ度  ★★★★★
学校経営の面白さ度         ★★★★★
教育とは何か            ★★★★☆
ただのミステリーではありません度  ★★★★★
とにかく女は膝は大事なのね度    ★★★☆☆
無人島に持っていきたい度      ★★☆☆☆

ネタバレなしの紹介
この作品の中心はメドウバンクという有名お金持ち女学校です。イギリスの学校は全寮制というのはハリーポッターで有名ですが、そんな全寮制の学校が舞台の作品です。そういうと、学園モノで学園ミステリーなのか?と簡単にくくりたくなりますが、そう簡単な作品ではありません。なぜなら、冒頭に革命テロなど血なまぐさいシーンがいきなり出てくるからで革命的な方向と女学校を絡めとてもスリリングな作品になっています。これは誤解されないように言うのは難しいけれど男子校が舞台では又違う話になってしまうでしょう。
私が面白い、と思ったのはミステリー自体も独特で新鮮ですが女学校の考え方を校長先生であるバルストロードが痛快に理想をもって経営している所でした。今まで学校を”経営”としての観点から考えたことがなかったのでとても新鮮に感じたし、学生時代に戻ってこの学校で学んでみたいと思う校風がありました。言い方が難しいけれど、花嫁学校ではありません。この言い方はもう古いですよね、でもこの時代はまだこの考え方があった頃だと思います。現代に学ぶべき学校の本質を突いているので読んでいてワクワクします。ミステリーなのに、その背景の女学校自体がもう面白いのです。
そんな女学校で起こってしまう殺人事件は、学校長を悩ませます。普通なら殺人事件が起こった学校などとんでもないことでつぶれてもおかしくない所ですが、肝がすわっているこのバルストロード校長は考え方が斬新で世間をよく知っていてピンチをチャンスに変える考え方が出来る人に書かれています。この人の魅力にポアロも協力を惜しまないであろう、と想像出来ます。
大人になりきらない女性の、ちょうど微妙な時期を上手く書いています。イギリスの少女は、アジアの女性よりも幼い、と表現しそこが推理の重要な事柄でもあります。多分アジアの女性の方が結婚してしまう時期が早かった頃の名残なのかなと思いますし、とてもその表現はアジア圏でも生活したことがあるアガサならではの表現かなとも思います。
大部分が女学校が舞台ですから、それに伴い、女学生や女性教師いろんな女性の生き方が出てきます。戦後の影響もあり女スパイの話も出てきます。アガサの時代は戦争の背景が色濃く、リアルに女性の仕事としてあったんだろうなと思うのです。作り話でなく、戦争とはそういうものなのかと考えさせられます。

ネタバレちょっとありの紹介
この作品は有名女学校で起こる連続殺事件です。なぜか室内競技場(体育館のようなものでしょう)で殺人が起こることが事件のカギになります。そして、そこへ唯一の男と言って良いのですが男前の庭師が入り込みます。年配の庭師であれば問題はないのですが、女性の園に男前の若い男の庭師というのは怪しさ満点です。この作品の映像化の時は是非ともキャスティングに力を入れていただきたく思います。(これはアガサが映像化の時にお楽しみがあった方がいいと思った為ではなかろうかと思いましたが)
最大のヒントとしたら以前にアガサが書いた『茶色い服の男』のトリックが出てきます。でもそれが分かったからと言って、このミステリーの面白さは変わりませんので、興味がある方は読んでみてはいかがでしょうか。
そして肝心のポアロなのですが、この作品においてはポアロは後半からしかでてきません。ほぼ、女性が主人公と言ってもいいくらい、魅力的な女性陣が出てきます。アガサの脳みそは”女性脳””男性脳”の区別を超えているのかもしれません。女性の身体の一部(膝)に非常に関心があるようで、その表現は他の作品でも出てきます。
ポアロが登場すると驚きの展開とともに一気に解決となります。ここの展開の仕方は非常に面白いなと思います。
殺人事件は陰惨なのですが、それでも精一杯のハッピーエンドを用意しています。ここはアガサの上手いところかなと思います。

ゴルフ場殺人事件

アガサの若々しい作品       ★★★★★
ヘイスティングズの惚れっぽさ度  ★★★★★
ポアロの推理が冴えてる度     ★★★☆☆
警察を出し抜く度         ★★★☆☆
無人島に持っていきたい度     ★★★☆☆


ネタバレなしの紹介
このお話は、ポアロの第2弾になります
『スタイルズ荘の殺人』でポアロが鮮烈デビューをした次の作品なので、アガサの文章も若々しさに溢れています。
あらすじは
あるとき富豪のルノール氏から南米の仕事上のトラブルで脅迫を受けているとポアロは依頼を受け、この男の家にいくのですが、そのルノール氏の家に行くとすでにその富豪は死んでしまっていたという不本意な始まりです。
しかもゴルフ場のバンカーの穴に入っているという状態で見つかるので”ゴルフ場殺人事件”なのです
家で縛られて生き残っていたエロイーズ夫人の話によると南米からの不審者が2人訪問し、ルノール氏は連れ出されてしまい殺されてしまったらしいのです。
当然事件解明に乗り出すポアロなのですが、よそから来た探偵のポアロを良く思っていない地元警察と確執が生まれます。
ポアロ対地元刑事のジロー刑事との推理合戦もこの小説を面白くさせています。

しかし、そもそも、このお話の最初が
”シンデレラ”と名乗る魅力的な女性が登場し、ヘイスティングズと出会うところからお話が始まるので、なんてロマンチックな恋愛ドラマが始まるんだろうという感じなのです。(もちろんこの女性も事件に大いに関係してきます)
ポアロと訪れたルノアール宅のとなりの美女にも好意を抱きますし、なんてヘイスティングズは惚れっぽいんだろうと思います。なので読み始めた私は戸惑いました。
それくらいヘイスティングズが恋に墜ちる描写が若い感性で書かれていて、あまりに惚れっぽくて推理小説になるんだろうかと心配するくらいです。恋するが故、事件を引っかき回すしポアロの邪魔もしまくります。中学生の初恋じゃあるまいし一体何歳の設定なのかと思うんですが恋愛に歳は関係ないですね。しかし初恋物語かと勘違いしそうです。
でもちゃんと推理小説になっています。

ネタバレちょっとあり
この作品の面白いところは、南米から来たと思われる人物が犯人らしく単純に思われるけども、そう単純ではないところです。複雑に丁寧に過去に起こった事件との絡みを旨く組み合わせているところです。コレはちょっと難しいなと思う事件です。
そしてエロイーズ夫人とおとなりのドーブルーユ夫人が事件のカギですがどちらも強い特徴があります。
男を愛し、そしてお金を愛する女性。両方欲しいのが人間なんでしょうけどもなかなか割り切れるモノではないと思うのです。
結局は愛の為に罪を犯し自分の欲望のために犯罪に手を染めるのですが、どっちがどっちとは言えませんが、どちらの女性も強いです。それだけは言っておきます。
ポアロの推理は冴えています。ただ時代的に可能な犯罪なだけで、現代では通用しない犯罪かなと思います。その辺は推理小説と割り切って楽しみたいと思います。

ところでゴルフ場で死体が見つかっただけで、特にゴルフをするシーンとかでてきません。
そもそもポアロはゴルフが嫌いなんじゃないでしょうか?(言い過ぎかも)ゴルフに関して全く関心ある描写がありません。ヘイスティングズはたしなむようですが。
そしてアガサの小説は題名が凝っているイメージがあると思うのですが、この『ゴルフ場殺人事件』は『そして誰もいなくなった』『ABC殺人事件』に比べれば印象は残らないですね。それが残念と言えばそこだけ残念な作品です。
この小説のヘイスティングズの描き方を見て、アガサはこの段階ではまだ名探偵ポアロをシリーズ化にするつもりはなかったんじゃないかとさえ思います。

葬儀を終えて


斬新な切り口のミステリー度  ★★★★☆
人物のユニークな描写度    ★★★☆☆
遺産相続への興味惹かれる度  ★★★☆☆
犯人への共感度        ★★★☆☆
無人島に持っていきたい度   ★☆☆☆☆

ネタばれなしの紹介
お葬式が終わるところからこの作品は始まります。
亡くなったのは薬で財をもうけたお金持ちのリチャードです。
唯一の子どもは先に亡くなっているので、遺産は兄弟姉妹、親戚などリチャードが残した遺言書にならって分けることになります。

何も不審な点がなかったリチャードの死ですが
葬儀に出席した妹コーラの『だって、リチャードは殺されたんでしょう?』の一言ですべてがひっくり返ります。
コーラは昔から天真爛漫な性格で言って良いことと悪いことの区別がつかない所があり、皆が隠したがる秘密を言い当てるような所も多分にあったため、葬儀に集まった皆はその言葉の真意を計り知れないまま家路につくことになります。
そしてその言葉を言い放ったコーラは家に帰った後、誰かの手によって惨殺されるのです。
コーラがあきらかに他殺であることにより、コーラが言い残した『だって、リチャードは殺されたんでしょう?』の戯れ言がクローズアップされてきます。

葬儀に居合わせ、そのコーラの一言を聞いた全員に疑いかかかるのも無理はありません。
もしくは全然関係のない殺人なのか?
遺産相続の泥沼な争いもからめて、殺人の動機は誰にでも充分にあるのです。
ポアロは遺産管理者の一人に依頼されて真相を探ることになります。

ネタバレちょっとありの感想
遺産相続は自分にとってはまだあんまりピンと来てないので、アガサクリスティーの小説に出てくると本当に他人事なんです。ですから楽しんで読める、と言うのもあるのかもしれません。
そういう意味で私は楽しめました。
後はコーラという人の人物描写が絶妙です。最初の被害者であるコーラの描写が一番重要だからです。
コーラが『だって、リチャードは殺されたんでしょう?』と言ったのでなければ、ここまで事件にならず問題にならなかったでしょう。しかし、このコーラは残念ながら兄弟姉妹親戚共に好かれてはいない、疎遠な関係であることを冒頭にアガサは上手に書き示しています。本当に上手い書き方だな、と思います。それによって読み手も真実はどうだったのかと好奇心が止まらなくなります。
犯人は私にとっては意外ではなかったのですが、動機が全く分からなかった作品です。
人によっては、犯人に対して全く共感をしないでしょう。しかし、私は同情はしないけど、共感は出来ました。動機に対してではなくて、コーラ(に似てるタイプと接する)に対しての感情も心の奥底にあったのかなと、ちょっと感じたりしたのです。誤解されると悲しいので、いつか完全ネタバレも書くつもりでいるので、その時にその感情は書きたいなと思っています。
そして一点、この作品の中に、他の作品の重要なシュチュエーションを彷彿とさせる場面が出てきます。コレは私だけが感じることかもしれませんが”多分コレはアノ作品のアノ場面にしてるな”と思う部分があります。ネタバレのなる可能性があるので、ここでは言いたいけど言いません。ヒントはこの作品以降に書かれる作品の中にあります。読まれる方は、そこの所も感じながら読んでみるのも面白いかもしれません。

作品順についてはこちらを参考にしてみてください↓

エッジウェア卿の死

ポアロがだまされる度    ★★★★☆
犯人に同情できない度    ★★★★★
女優の華やかさ度      ★★★★★
無人島に持ってきたい度   ★☆☆☆☆

ネタばれなしの紹介
この作品は読み始めからドラマティックです
華やかなショービジネスが舞台、美男美女が出てきますし何しろポアロの友人のヘイスティングズが最初に”ある非常に魅力的な一女性の心からの願いを実現することにもなる”などと思わせぶりに読み手を誘うからです

この頃のショービジネスの風景も今と変わりがないようで、結婚離婚の繰り返しで世間を賑やかすのは定番
そこにはお金とスキャンダルがてんこ盛りです
そんな中、よりによってポアロに離婚問題の解決を依頼する美人女優が出てくるのです
それがエッジウェア卿の奥様、ジェーン・ウィルキンスンなのです
エッジウェア卿は大金持ち、しかし性格に難ありで有名なひとなのですが前の夫人ともすったもんだでなかなか離婚に応じなかった過去があります
それが分かっていながら、その問題のエッジウェア卿と結婚するなんて女優っておかしな生き物ですねっと凡人の私などは思うのですが、大金持ちというのは変人を魅力的に魅せるものですから何回も問題おこしつつ結婚しちゃうわけです(だろうと思われます)
なので簡単にはいかない離婚に応じるように説得して欲しいとポアロにお願いするのも分からないではないのですが、そもそもポアロがやることがない案件です
自ら面白いと思う事件しか引き受けないポアロも強引な女優に無理やりその離婚問題を引き受けさせられますが
どちらかというと、ヘイスティングズがその女優のファンだったから、と言うのが理由ではないかと思います
ヘイスティングズは女性に弱いんだなと毎回思いますが、今回もその傾向は顕著です

とにかくその離婚問題が事件の発端になりますが離婚問題はあっけなく解決します
さすがポアロ!と言いたくなりますが別にポアロの手柄ではありません
ポアロが離婚問題に着手する前にエッジウェア卿はすでに離婚に応じていたというのです
そこもこの作品を惑わせるひとつの要因です
ウソをついているのは夫か夫人かどっちなのか?どちらもだまされているのか?
題名通りポアロが会ったその後にエッジウェア卿が殺されて亡くなるので、いうなればポアロは無理やり事件に巻き込まさせられたと言っていいと思います

離婚したい理由が、他の男と結婚したいからと言ってのけていた夫人の女優ジェーンは限りなく怪しい
しかし、完璧なアリバイがある
犯人は今の夫人と結婚したい新しい男なのか、前の夫人との間に出来た娘なのか、それとも?
一体エッジウェア卿を殺したのは誰なのか?
事件はどのように解決出来るのか?そんな作品です


アガサの作品にはいくつか女優が出てくる作品があります

女優ってこういう生き物でしょって言わんばかりのアガサの表現の面白さがそこにあります
例えば『鏡は横にひび割れて』なども女優が登場しますが(この作品はエリザベステイラーが演じられていた事もあります)こちらの女優はまたちがう表現をされてます
沢山の女優さんの表現がある中で自分がどんなに魅力的か分かっている女優のエゴイストの表現は上手いなと思います
そして同時に芸術として賞賛される女優も出てきたりします
今作ではカーロッタ・アダムズという女優の存在が面白いです
とても面白いなと思います
それだけでも読む価値はあるかもしれません

それをふまえた上で、
この『エッジウェア卿の死』重要人物の女優がちょっと大げさな描写かなと思いますし(そこが面白いと言えば面白いけれども)そこは置いといても、今作のポアロの推理はちょっと冴えが良くない気がするんです。ヘイスティングズの気に入った女性への盲目度は半端ないですし。(アガサはわざとでしょうが)そんなわけでこの作品が好きですか?と聞かれれば 私はあんまり好きではありませんと答えますがこの作品を面白いか、と言われれば、面白いと答えるでしょう
矛盾するかも知れませんが、そんなわけで無人島までは持っていかない本ではあるんですけど単純に見えて複雑な事件にしている、あり得ない設定のそんな作品とだけ言っておきます







象は忘れない

アガサファンなら読んでおきたい度    ★★★★★
ポアロファンなら読んでおきたい度    ★★★★★
大逆転度                ★★☆☆☆
無人島に持ってきたい度         ★★★☆☆ 

実は私が一番最後に紹介したかった作品です
なぜならアガサが書いたポアロものの本当に最後の作品だからです
チョット詳しい方ならポアロの最後の作品と言ったら『カーテン』じゃないのって言われるかも知れません
アガサの死後に発表するよう遺言され、その通りに世間に発表された作品は確かに『カーテン』です
詳しくはいつか「カーテン」を紹介したときにしたいと思いますが、とにかく実際にポアロもので「カーテン」後に書かれたのはこの『象は忘れない』なのです
なので、作中に昔に解いてきた、過去に遡って解決する『5匹の子豚』とか『ひらいたトランプ』とか他にもそんな作品名が出てきて、読みながらああ、本当にコレはアガサのポアロの最後の作品なのかとしみじみ思います
(今回紹介に至ったのは、世界情勢でのいろいろや災害いろんなことが起こるので、明日を後悔しないように、紹介したい作品を早めにしておこうと思った次第です、、、おおげさですけどね!)

過去の事件を掘り起こして真相にたどり着くポアロお得意の回顧推理ストーリーです
過去の事件自体は悲惨で悲しいのですが作品の構成はとても粋な作品です
ポアロの友人小説家のオリヴァが受けた依頼が発端で、過去の事件の真相を暴いていきますがオリヴァ自身もあちこち話を聞きに行く活躍ぶりです
その報告をもとにポアロは順序立て、真相を組み立てていきます
友人で小説家のオリヴァは、売れっ子でまるでアガサの分身のようです
有名人としてパーティーに呼ばれて行くことの滑稽さや“ファンです”と言われることの苦痛なども書いていて、この作品はその気の進まない催しの描写などから始まります
アガサもそんな気の進まないパーティーに出ていたのかもと思ったりして面白いです
この本の題名”象は忘れない”は”象は決して過去の事を忘れない”親切にしてくれた人の顔も、危害を加えた人の事も全て覚えている、その象の特性をアガサ自身も気に入っていたのでしょう
関係者の過去を思い出を『象』と名付けて“象をさがしに言ってくるわ”とオリヴァに言わせながらユーモアにして捜査に出かけていくことから題名が付いています
頻繁に”象”という言葉が出てきますが実際に本物の象は出てきません

トリックとしては、難しくはないです。今となってはミステリー好きなら思い付くネタかもと思わないでもないですし、トリックというよりは人間関係、動機は何かという謎解きになると思います。ちょっと感傷的な作品です
なので自分としては無人島まではもって行くにはちょっと湿っぽいなという感じです
いつも強気なポアロが自分はすでに過去の探偵なんだと自覚しているようなシーンもあって切ないです
自分の灰色の脳細胞に絶対的な自信のある傲慢気味なポアロがですよ?今まであり得なかった事です
対比として未来に生きる若い人間のたくましさを書いているのも、アガサ的に最後のポアロ作品『カーテン』の後の作品らしいと言えばらしいです。
作品の中に重要なアイテムの住所録が出て来るのですが、その年代別の住所録の年代のままに作品も書かれているのを知った時、直接事件のトリックとは関係ないですがアガサが生きていた時代をリアルに感じることが出来て興味深いと思います
最後のオリヴァの台詞を読み終えたとき、アガサはこの一言が最後にいいたかったのかなとハッとします

作品のあらすじ
小説家のオリヴァはあるパーティーの最中、一人の女性に頼み事をされます
以前オリヴァが名付け親になった女性がうちの息子と結婚する予定だが、その女性の親が過去に謎の心中事件を起こしている。男親の方が母親を殺してから自殺したのか、または逆なのかまたは第3者の殺しの可能性があるのか、それによっては息子の結婚に賛成しかねる、そんな内容です。オリヴァにとったら、過去何人もの名付け親になってるうち一人のことだし、いきなりそんなこと言われたって“いい迷惑”でございます。しかしまるっきり無視も出来ないので、そのパーティーの帰りに、早速ポアロの家に押しかけ(事前に電話するだけマシ)“こんなこと頼まれたのよ!過去の事件を調べるのあなた得意でしょう!”てな具合でまくし立て、ポアロに協力させるのです。遠慮なんてオリヴァに存在しません
ポアロは、その時にはすでに引退状態で、引き受けるギリなんてありませんが、オリヴァはポアロを上手に使うすべを知っています。そんなわけで引き受けたポアロとオリヴァは事件の真相に迫っていくのです

オリヴァに依頼してきた女性にも、秘密があり、ただ息子を心配するだけじゃない”何か”もあぶり出します
依頼主はそこまで暴かれたくなかったでしょうが、ポアロはお構いなしです。
とにかく関係者からの聞き取り、噂話の収集から始まります。過去の話ということもあり、聞く人によって事件の見方が違うことや、同じ家族の印象も違うので、何が本当か分からなくなってきます。それでも、地道に過去の思い出を聞き取りに旅に出るオリヴァとポアロがいて、些細なこと、例えば飼っている犬のことやかつらのことなどから真相が解かれたとき、なるほどなあ、、、と思います



ホロー荘の殺人

個性的な登場人物がいる度     ★★★★★
トリックの複雑度         ★★☆☆☆
ポアロの活躍度          ★☆☆☆☆ 
アガサの芸術家に対する秀逸な表現 ★★★★★
無人島に持っていきたい度     ★★☆☆☆

ネタばれ無しの紹介
この作品は一見単純に見えます。明らかに最初に犯人が分かるからです。
(しかしそういう単純な話ではもちろんありません)
なにせ私がこの作品を最初に読んだのが中学生でしたから『なんて単純な話だろう、ポアロが出る幕もない!』などと思ったものです。今思えば、人生経験も少ない時の浅はかな幼さ故なのですが。
それと同時に物語を引っ張る女性、”ヘンリエッタ”という芸術家が出てくるのですがその女性のようになりたいとあこがれを抱きました。彼女に自立と愛する人に媚びない強さ(当時はそう思いました)を感じたからです。
魅力的で個性的な女性5人が出てきます。幼い私はどんな大人の女性になろうかと思ったときにサンプルがこの本に出てくる、と感じていました。あこがれのヘンリエッタと対照的な女性”ガーダ”にはイライラしましたし、ホロー荘の女主人の”ルーシー”にはまさかこんな支離滅裂な人いるかしら?と思ったし(でも、社会に出たら、意外といました(^_^;))親近感を覚えるのが”ミッジ”、絶対に共感できない”ヴェロニカ”これだけで、充分かき回せそうな設定です。

さて話が少しずれましたね!
そもそもこの作品は読んでその名の通り『ホロー荘』で起こる殺人の話なのですが、『ホロー荘』というのは富裕層の持つ邸宅の名前です。そこに仲良し親族が集まるのが年中行事になっているわけです。それだけでは殺人の臭いはしませんね?殺人事件が起こるまでに、実に本編の3分の1読み終わらなければなりません。全ては殺人が起こるまでの入念な舞台装置を設置するためなんですが、その間に男女のドロドロなドラマがありまして今から思えば中学生には刺激が強いですね!パワハラはあるし浮気はするし!(詳しくは言いませんが)
すっかり整えられた舞台で、起こる殺人(に見える情景)をポアロは目撃して推理が始まるのですが、それまでに読者は前の日に何がこのホロー荘で起こったかは分かっています。それでも次の日のあまりにも急展開な殺人の情景をポアロの目線で一緒に知らされるので読者はこれは殺人が起こったという合図なんだろうか?どうなんだろうか?なんて混乱すると思います。そこが新鮮です。
この作品を推理小説とするにはあまりにも読者に対して証拠が少なすぎる気がするので、トリックの複雑度は★少なめです。犯人が”この人が犯人なんだ?”と共感出来ない自分がいるので、無人島に持っていきたい度も少なめですが、アガサの”脚本”の上手さにはうなります。
アガサの芸術家に対するリスペクトを感じる作品でもあります。他の作品『5匹の子豚』でも芸術家に対してのリスペクトを感じることが出来ます。

ポアロの秘書ミス・レモンについて



登場人物の紹介
ポアロ作品に出てくる人物になります

ミス・レモンというのはポアロの秘書です。45歳くらいの女性秘書で、しっかりとした仕事ぶりの、いかにもポアロが雇いそうな、そういった意味では申し分ない秘書として登場します。事務的な処理については”失敗しない”有能キャラです。
文章の的確さから、請求書の分別、業者への対応、手紙のタイピングなど秘書としてすべて完璧です。
あまり人をほめないポアロですが、その完璧さに一目置いてる感じがあります。ここまで聞くとポアロと恋仲になっても良いのではと思うのですが、そうはなりません!

なぜなら彼女の唯一欠点ば”人間についての興味がない”ということなのです。ポアロミス・レモンに『どう思う?』と興味ある事件について聞いたりしますがミス・レモンはイラッとした顔で”私の仕事の範囲と違うことを聞かないでください、それは今必要ですか?”と、まるで機械のような無機質さで答え、ポアロをがっかりさせます。人間に対する想像力があまりないタイプなのです。ですから、秘書として優秀でもポアロと恋仲になりそうな雰囲気は全くありません。
想像豊かなポアロの友人ヘイスティングズとの比較に使われているようにも思います。

アガサの作品の『スペイン櫃の秘密』『バクダッド大櫃の秘密』は同じ題材でほとんど同じ内容の話ですが、雰囲気は違います。『スペイン櫃の秘密』にはミスレモンが、事件に関わる人物の説明をわかりやすく説明させているシーンがあります。『バクダッド大櫃の秘密』にはヘイスティングズが出てくるので、そこも違います。微妙な違いを読み比べてみてもいいかもしれません。
”ヒッコリーロードの殺人”という長編の中では、ミスレモンの姉が関わる事件を依頼をするのでその時はいつもより出番が多く、人間的なところをのぞかせるシーンも出てきます。(そこも面白い所だなと思います)
他にもミスレモンの活躍を思い出せたら、随時追加していきますが、それにしてもポアロの完璧な秘書として、彼が雇うにふさわしいなと思える人物かもしれません。出番は少なくとも、ポアロの作品において印象に残る登場人物です。
ミスレモンが、機械的な受け答えなど徹底しており、決して恋仲にならず、ポアロに対して女性的な”隙”が全く見えないのは、雇い主のポアロが(多少)変人に書かれていますので、もしかしたら、”雇い主としては良いけど恋愛対象にはならないわ!”というミスレモンの暗にそういう意思表示なのかもしれないと最近思うようになりました。今のところはなんとも言えないですが。そこらへんも想像しながら読んでみるのもいいかもしれません。


ヒッコリーロードの殺人

たわいない話かと思いきや奥が深い度  ★★★★★
登場人物がばたばた死んじゃう度    ★★★★☆
ポアロの秘書レモン様が出てきます度  ★★★★★
無人島に持っていきたい度       ★★★★☆ 

この作品の舞台は、日本で言うところのシェアハウス、若い男女が共同で住むアパートのような住宅です。寮母さんや管理人さん、食事も付いているので、寮とホテルの中間っぽい感じでしょうか。そこで寮母をしていたのが、あのポアロの優秀な機械のような正確さを持つ秘書のミスレモンの姉であることから、雇い主のポアロは相談に乗るという形で事件にかかわっていくのです。登場人物も個性的で多国籍になり、アガサの感情の感覚で書いてるのか、わざとなのかかなり人物像に偏りがありますが身近に同じような人がいたのではないかと思ってしまいます。この作品の特徴として面白いのは意味のないと思われる靴の片方とか、聴診器とか、一見つながりがないものが、最後には一本の線で繋がるところです。そのためには、盗まれたのもの持ち主のそれぞれの性格や特徴が合ってなくては疑問が出るのですがそこはアガサのこと、ばっちり表現しているので点と線がつながります。そこに矛盾がないのが素晴らしいです。

ネタバレなしの紹介
ヒッコリーロードという番地にある、若い男女が住むシェアハウスで、色んな物がなくなっていきます。靴の片方、リュックサック、化粧コンパクト、廊下と玄関の電球、など他愛のないものばかりなくなるのですが、そこの寮母として働いているのがポアロの秘書ミスレモンのお姉さんなので、様子を見に行く事になります。初めて訪れるシェアハウスで、捜し物のなくなったはずの靴の片方を携えて現われるポアロは魔法使いのようです。そこもすばらしい演出です。この他愛もない窃盗事件の意見を求められたポアロは『ただちに警察に連絡しなさい』と言い放ち、まさかそんなことを言われると思ってなかった住人は騒然とし、そこから事件は隠されていた凶悪さがあぶり出されるのです。”うそつきは泥棒の始まり”と言いますが、この作品は、『泥棒は凶悪犯罪のはじまり』と言いたくなるような作品です。いろんな人間模様が絡み合いすべてが明るみになる時、読者は犯人を一転二転させられたことに”やられた!”と思うでしょう。登場人物も多くそれぞれが個性的なので何回か読むたび魅力も新たに発見できる作品だと思います。ちなみに、ヒッコリーという単語はマザーグースの一説にも登場しますがポアロが口ずさむところも出てきます。(本編とは関係ないのですがアガサはよくマザーグースを小説に登場させますね)

ここからは少しネタバレありです
まず、この作品の好きなとことはポアロの優秀な秘書ミス・レモンが事件にかかわるところです。ミス・レモンというのは完璧な秘書で事務的な処理については一切”失敗しない”のキャラなのです。唯一の欠点は人間についての興味がないという事なのです。そのミス・レモンに実は姉がいて、姉の方は世話好きで人間に興味がありシェアハウスの管理人をしているというから、面白いのです。姉ハバード夫人はミス・レモンとは違って人間の世話を焼くのが好きなのです。しかしそこで、不可解で不愉快な盗難事件が続いているため、悩んでいたのです。ミス・レモンは自分の雇い主のポアロに相談し、ポアロがその”ヒッコリーロード”にある管理人をしているシェアハウスに訪れ、強い口調で『警察にすぐ行きなさい』と言います。それを聞き驚いた住人のシーリア・オースティンが『私がやりました』と告白しに来ます。実は住人の心理学に興味があるコリン・マックナブを振り向かせたいとやってしまった戯れだったのです。その作戦が功を奏し、コリンとめでたく結ばれたシーリアだったのですが、ここら辺は恋愛の心理学についてもアガサはよくご存じで!って感じに、目も当てられないくらい恋愛チックです。甘くて熱々でたまらんわあって思ってると、そのシーリアが翌朝なぜか死体で発見されます。婚約して幸せの絶頂だったハズなのに、翌朝死体ですから大ショックの急展開過ぎます。盗んだいくつかは、弁償するという話だったのですが、電球やリュックサックについては知らない、もしくは言葉を濁します。そこらへんも、うまいなあと思うんですが、それが事件の謎の鍵になるのです。結局は、寮を巻き込んでの犯罪の巣窟だったのです。ミス・レモンの姉は管理人をしてますがオーナーは別にいて、姉は犯罪には無関係でした。ですがオーナー、ニコレティス夫人は犯罪に加担していたため、殺されてしまいます。(戸棚の酒瓶の秘密とか巧妙に書かれていますが割愛します)
最初から一番犯人らしくもあり、それで却って犯人らしくなかった住人が黒幕として、ポアロに最後にはあぶりだされます。本当に見事な話の組み立てです。登場人物が個性的で、ドラマにしたときそれぞれ俳優さんは誰がいいかな、なんて想像してしまう作品でそこも実に面白い作品だと思います。
ちなみに、ポアロの別作品『死者のあやまち』の中に似たようなトリックが出てきます。どこが似てるかはこれから読む人のお楽しみとして言わないでおきます。

スタイルズ荘の怪事件

犯人が一転二転三転する度       ★★★★★
アガサの才能は最初からすごい度    ★★★★☆
ポアロつかみはOK 度          ★★★★★
ヘイティングスおちゃめ度       ★★★★★
無人島に持っていきたい度       ★★☆☆☆ 

アガサの記念すべき推理小説一作目です。
アガサ自身が長く付き合うことになる名探偵ポアロがここでで登場します。
ポアロの語り部で相棒のヘイスティングズももちろん出てきます。
ヘイスティングズポアロの友人であります。
この2人の性格と年の離れた関係性がこの作品を面白くしています。
トリックも、この当時の時代だから成立すると言うこともありますが、看護師の経験があるアガサならではの知識があってこそのしっかりとした小説になってます。


ネタバレなしの紹介

”スタイルズ地方の地主の
奉仕活動家女主人殺人事件”


傷病兵として休暇中のヘイスティングズが旧友の勧めで旧友の実家のあるスタイルズ荘に招かれ、ゆっくりすごそうかと思った矢先に継母の女主人が毒殺されてしまいます。
その犯人探しになりますが、家族も誰もが遺産を巡って動機があって怪しいのです。


読み進めていくと、一転二転して新しい事実がでてくるし遺言状は何枚も出てくるし、誰かが誰かをかばっているのかややこしい状況も出てきて、怪しい人ばかりでいったい誰が犯人か全く分からないのです。


後妻業ならぬ、後夫業的な若い夫もあやしいし、不倫もあり、ワイドショーのネタ満載です。
殺された女主人にお世話になったことがあるポアロもたまたまスタイルズ地方を訪れており、必然的に事件解決に乗り出す事になります。


ヘイスティングズの独り言にヒントがあるのですが基本ポアロの推理のすごさを助長させるだけだったりします。その独り言を分かった今でも私にはさっぱり推理できませんからアガサのすごいところはつまりはアガサ自身がすごい名探偵だというところですね。(今更ですが)
ヘイスティングズの惚れっぽいところとか何回も同シリーズを既に読んでる私は知っているので、改めて第一話のこの『スタイルズ荘の怪事件』を最初からヘイスティングズはこんなに惚れっぽいんだ、若いなあってニヤってするところもあります。
アガサはポアロを一回切りの登場で、続き物を書く気はなかったと聞いたことがありますが、この作品で意外にも人気になってしまい必然的に書き続けることになる記念すべき作品です。

私的には登場人物、特に殺された女主人に自分は共感を持てないし魅力を感じないので(失礼ですね)作品的にはあんまり好きな作品ではないんです。しかし、最後の大どんでん返しに読者は驚くと思いますし、記念すべきポアロの初挑戦推理小説ですから読んでおいて損はありません。。
私が無人島に持っていく本としては、他のポアロ作品の方が私は大好きすぎるので★少なめですが、でも、あくまでも個人的な好みの理由なので面白い推理小説の1つであることに変わりありません。
ポアロが好きなら是非読んでいただきたい作品です。