秘密機関

冒険活劇度               ★★★★★
ミステリーというカテゴリーかどうか
悩む度                 ★★★★★
少なくとも推理物ではないかも度     ★★★☆☆
無人島に持っていきたい度        ☆☆☆☆☆

ネタバレ無しの紹介
この作品はアガサの作品発表順で行くと『スタイルズ荘の怪事件』の次の作品です。ミステリーの第2弾かと期待してしまいますが、この『秘密機関』はミステリーや推理というよりは冒険とスパイの物語ですから、ちょっと雰囲気が違います。
文章の雰囲気が若々しいです。ポアロは出てきませんし、若いトミーとタペンスの物語です。
『茶色い服の男』の時にも思いましたがアガサは若い女性がイキイキと冒険に出る話が好きなようです。アガサは本当はスパイ物や冒険物が書きたかったのでしょうか?しかし、この後に発表される『ビック4』という作品で無理やりポアロに冒険をさせているような作品がありますが、その作品は全くびっくりするほど読みづらかった作品でした。(ハッキリ言って眠くなります)しかし、その『ビッグ4』に比べればこの『秘密機関』は若い男女のコンビが冒険をする物語で、いくらか読み応えがあります。戦後のお金はない、仕事もない、でも若さと知恵と行動力は誰にも負けない、そんな前向きな2人が主人公です。そしてこの2人がユニークな相性で書かれていて、お互いの足りないところを補い合ってとても大きな事件を解決して行くのです。ワクワクしますがあり得ないことの連続です。
しかし、それも戦争の後の混乱期を書いていると思えば、同情も出来ます。戦後のイギリス、お金がない職のない若者は溢れていました。生きる希望、まだ若いんだから何でも挑戦しなさいよとアガサは元気づけていたのかもしれません。ハラハラドキドキの冒険の物語になっています。

ネタバレ無しのあらすじ
いきなり船が沈むシーンから始まります。悲劇の”タイタニック”を思い起こさせる始まりですが、沈む原因は氷山ではなく戦争の影響の”魚雷”にやられたというのがあまりにもひどい始まりです。船の乗客は順番に救助ボートに乗るのを待っていますが、ジェントルマンの国では女性や子どもからボートに乗れるので女性が助かる可能性が高い。それを痛いほど分かっている男のスパイが、『私が助からなかったらアメリカ大使館へこれを届けて欲しい』と機密文書をある女性に託すのです。まさに生きるか死ぬかの瀬戸際の頼み事ですし頼まれた女性も命がけです。そんなシリアスなシーンからの始まりなのです。
そして、場面は変わり、戦後のイギリスの町中で失業中の若い男女トミーとタペンスが出会い、なにかしらで2人で生きていくすべを話し合っている時に、ある男から声を掛けられます。怪しげな仕事を依頼され、タペンスが口からでまかせに女性名”ジェーン・フィン”と名乗ったところ、何故か相手は怒り出し、大金を渡すのです。仕事の依頼はよく分からず完全に受けていないと言うのに。詳しい仕事の話をしようとした次の日、その怪しげな事務所と男は消えてしまいます。
そんな状況で”ジェーン・フェン”とは誰か?何者か?調査を始め、自ら危険な人捜しの冒険に飛び込んでいくトミーとタペンスなのでした。

簡単に言うと、2人の男女トミーとタペンスの探偵物語といったところです。素人探偵がよくもまあ、死なずにいられるなあという危険とハプニングの連続です。
文章も若いです。きっと楽しい冒険にワクワクしながらアガサは書いているんだと思いました。トミーとタペンス、この2人の恋模様も描かれますし『ABC鉄道案内』も出てきて、アガサファンで『ABC殺人事件』を読んだことが在る人は”あれ?!”と思うでしょう。期待しないで読むと楽しめる一冊かもしれません。私はポアロやマープルのミステリーが好きですから、無人島には持って行かない本ではありますが、結婚についてのアガサの興味深い考察もありますのでそれを読むだけでも面白い作品だと思います。
尚、アガサはこの若い2人を後に『おしどり探偵』という短編集で活躍を書いています。かわいい2人のユニークな会話やアガサの遊び心満載のじゃれ合いを楽しむ方にはこちらもおすすめします!
蛇足ですが男女ペアで事件解決のお話は、他にもあって『なぜ、エバンスに頼まなかったのか?』という作品のボビィとフランキーがいますが、こちらは最初からミステリーの要素が強いですし、貧乏な青年と伯爵令嬢の2人のコンビの物語にもなっています。私はこちらの方が正直好きな作品なのですが、完全に好みの問題ですので、ご了承ください。

ABC殺人事件

アガサの代表作度   ★★★★★
ABC本の名前の有名度  ★★★★★
アガサの人を観察する度    ★★★★★
コレを読んでおけばミステリーの
世間話が出来るぞ度      ★★★★★ 
無人島に持っていきたい度   ★★☆☆☆


ABC殺人事件と言えばアガサクリスティーの代表作の一つで、その印象的な題名は一度聞いたら忘れる事はないでしょう。日本で言えば”あいうえお”殺人事件みたいな感じでしょうか
殺人現場に残されるABCの本から『ABC殺人事件』と言われるのですが、この本は”鉄道案内のガイドブック”で親切にABCのアルファベット順で地域と駅、時間や金額、近くのホテルや観光場所など詳しく載っていて大変便利だったようです
ミステリー好きであれば、話のネタにも一回は読んでおきたいアガサの超有名作品です


あらすじ
『ABC』と名乗る犯人からの殺害予告がポアロの元に届き、予告通りの日にちと場所、しかも最初の事件がAの付く町で
Aの頭文字の人が殺されてしまいます。その事件が解決しないまま次の殺人予告がまた届き、今度はBの付く町で、Bの頭文字の人が殺されてしまうのです。そしてまたCの町の殺人予告がポアロの元に届く、という連続殺人事件となっています。
殺人現場には『鉄道案内ABC』のガイドブックが必ず置かれているという状況から『ABC殺人事件』と言われるのですが
このセンセーショナルで残忍な事件をポアロがヘイスティングズと解決する作品です

ネタバレなしの紹介
あらすじ
難事件を解決し名探偵として名をあげてきたポアロのもとに殺人予告の手紙が届きます。差出人はタイプライターで打たれた『ABC』とだけ。内容は”Aのつく町で21日に殺人が起こるから警戒せようぬぼれた探偵ポアロよ”(簡単に言うと)と、かなりポアロを煽る感じなのです。この手紙だけでは、いたずらなのかもしれないし、わかりません。事件はそんな奇妙な始まりです


ポアロは探偵も引退していて夢だったカボチャ作りに夢中だったはずなのですが、実のところは、事件の依頼がチラホラあり完全に引退まではしていなかったようです。それどころか難事件を解決してきた自分の灰色の脳細胞を持て余し気味でした。そこへ南アフリカから旧友のヘイスティングズが帰ってきたので(ヘイスティングズは南アフリカに妻を残して来ているので期間は限られているのですが)昔のエキサイティングな事件の事などがよみがえったのでしょう。
”なにか気の利いた事件”をまた二人で解決しよう!と持ちかけます(なんて物騒な話なんでしょう!)その直後に『ABC』の殺人予告の手紙がポアロ宛に届くので、びっくりです
しかも、ご丁寧に殺人の場所と日にちまで書いてあるのです。ポアロも随分軽く見られてしまってたようです!(これは犯人の思惑があったのですが)私はポアロがヘイスティングズに”また何か2人で事件を解決したい”的な事を言った直後の殺人予告の手紙だったので、てっきりヘイスティングズの何かの伏線か、関係があるのかと思ってしまいましたが、実際はそういうわけではなく、たまたまだったようです(すみません、私の考えすぎでした)
最初のポアロと旧友のヘイスティングズの再会は、ポアロファンならニヤニヤするくらいの会話の応酬ですし、直接事件とは関係ないところですが最終回の作品と呼ばれる『カーテン』への伏線もうっすら入っています。『カーテン』を読んでいる方なら、”あ、この会話は!”と気付かれるかと思います

いつもは語り部としてヘイスティングズの目を通して事件を追うのですが、今回の『ABC殺人事件』はある理由から他の視点でも描かれます。これは最後まで読み終わって、ようやくそういうことか!と思います(言いたいけどネタバレなので言いません)ポアロ宛に殺人予告が届くこと、しかし防げずに殺人は次々と起こるので犯人の狙いはポアロに恨みがあると考えるのが話の流れではないでしょうか?散々推理小説を読んできた私は、そう考えもしますが、話はそんな単純ではありませんでした。予告があるのにもかかわらずポアロが手も足も出ず殺人が起こってしまう失態の連続ですし難事件と言っても良いと思います。
ミスリードもありますし素直に読んでいる読者は犯人が誰かさっぱり分からないと思います!犯人捜しは難しかったです
トリックとしては偶然に頼りすぎているので私にとって無人島に持っていくリストには最優先に入れる本ではありませんが、ABC順に殺人が起こるという前代未聞のアイデアはさすがだなと言うしかありません。
最後のポアロの謎解きのシーンはいつもながら大どんでん返しでスカッとします。事件は悲惨ですがハッピーエンドと言っても良いでしょう。(複雑ですが)
そして私のこの作品の大好きなところをあげるとミステリーでありながら①戦争反対の意思、戦争の後遺症の悲惨さ、②弱者への暖かいまなざしを感じられるところ、があります(それを感じられるシーンは少ないけど印象に残ります)もちろん魅力はそれだけではありませんので是非まだの方は読んでいただきたいと思います

映像化も沢山されている『ABC殺人事件』、BBCドラマも映像化をされていますがこのABC殺人事件のドラマ化に関してはとても面白い解釈と表現がされていました
こちらも機会があれば、原作を読んだ後でですが鑑賞をおすすめします(原作を読んでなくても面白いと思いますが、原作を読んでいた方がドラマの面白さは増えるかなと私は思いました)









エッジウェア卿の死

ポアロがだまされる度    ★★★★☆
犯人に同情できない度    ★★★★★
女優の華やかさ度      ★★★★★
無人島に持ってきたい度   ★☆☆☆☆

ネタばれなしの紹介
この作品は読み始めからドラマティックです
華やかなショービジネスが舞台、美男美女が出てきますし何しろポアロの友人のヘイスティングズが最初に”ある非常に魅力的な一女性の心からの願いを実現することにもなる”などと思わせぶりに読み手を誘うからです

この頃のショービジネスの風景も今と変わりがないようで、結婚離婚の繰り返しで世間を賑やかすのは定番
そこにはお金とスキャンダルがてんこ盛りです
そんな中、よりによってポアロに離婚問題の解決を依頼する美人女優が出てくるのです
それがエッジウェア卿の奥様、ジェーン・ウィルキンスンなのです
エッジウェア卿は大金持ち、しかし性格に難ありで有名なひとなのですが前の夫人ともすったもんだでなかなか離婚に応じなかった過去があります
それが分かっていながら、その問題のエッジウェア卿と結婚するなんて女優っておかしな生き物ですねっと凡人の私などは思うのですが、大金持ちというのは変人を魅力的に魅せるものですから何回も問題おこしつつ結婚しちゃうわけです(だろうと思われます)
なので簡単にはいかない離婚に応じるように説得して欲しいとポアロにお願いするのも分からないではないのですが、そもそもポアロがやることがない案件です
自ら面白いと思う事件しか引き受けないポアロも強引な女優に無理やりその離婚問題を引き受けさせられますが
どちらかというと、ヘイスティングズがその女優のファンだったから、と言うのが理由ではないかと思います
ヘイスティングズは女性に弱いんだなと毎回思いますが、今回もその傾向は顕著です

とにかくその離婚問題が事件の発端になりますが離婚問題はあっけなく解決します
さすがポアロ!と言いたくなりますが別にポアロの手柄ではありません
ポアロが離婚問題に着手する前にエッジウェア卿はすでに離婚に応じていたというのです
そこもこの作品を惑わせるひとつの要因です
ウソをついているのは夫か夫人かどっちなのか?どちらもだまされているのか?
題名通りポアロが会ったその後にエッジウェア卿が殺されて亡くなるので、いうなればポアロは無理やり事件に巻き込まさせられたと言っていいと思います

離婚したい理由が、他の男と結婚したいからと言ってのけていた夫人の女優ジェーンは限りなく怪しい
しかし、完璧なアリバイがある
犯人は今の夫人と結婚したい新しい男なのか、前の夫人との間に出来た娘なのか、それとも?
一体エッジウェア卿を殺したのは誰なのか?
事件はどのように解決出来るのか?そんな作品です


アガサの作品にはいくつか女優が出てくる作品があります

女優ってこういう生き物でしょって言わんばかりのアガサの表現の面白さがそこにあります
例えば『鏡は横にひび割れて』なども女優が登場しますが(この作品はエリザベステイラーが演じられていた事もあります)こちらの女優はまたちがう表現をされてます
沢山の女優さんの表現がある中で自分がどんなに魅力的か分かっている女優のエゴイストの表現は上手いなと思います
そして同時に芸術として賞賛される女優も出てきたりします
今作ではカーロッタ・アダムズという女優の存在が面白いです
とても面白いなと思います
それだけでも読む価値はあるかもしれません

それをふまえた上で、
この『エッジウェア卿の死』重要人物の女優がちょっと大げさな描写かなと思いますし(そこが面白いと言えば面白いけれども)そこは置いといても、今作のポアロの推理はちょっと冴えが良くない気がするんです。ヘイスティングズの気に入った女性への盲目度は半端ないですし。(アガサはわざとでしょうが)そんなわけでこの作品が好きですか?と聞かれれば 私はあんまり好きではありませんと答えますがこの作品を面白いか、と言われれば、面白いと答えるでしょう
矛盾するかも知れませんが、そんなわけで無人島までは持っていかない本ではあるんですけど単純に見えて複雑な事件にしている、あり得ない設定のそんな作品とだけ言っておきます







カリブ海の秘密

マープルのかっこよさ   ★★★★☆
マープルの足を痛める度  ★★★★★
ちょっとずるい推理度   ★★★★★
無人島にもって行きたい度 ★★★☆☆

 

ネタバレあまり無しの紹介
アガサクリスティーの作品の中のミスマープルシリーズ
大人気の安楽椅子探偵ミスマープルの長編です
探偵といっても見た目はどこにでもいるようなおばあさんですから周りはその見た目に油断してしまいます
いつも村にいるはずのミスマープルが今回は海外にお出かけをしているところが特別な作品です!
セントメアリー村に住むマープルが甥のデズモンドの好意で南の島へ療養に行くことになるのですが、アガサクリスティーはミスマープルにご褒美のつもりで南の島へ行って欲しかったかもしれません。
お金持ちのリゾート地、カリブ海が舞台でミスマープルが活躍するわけなのでときめかないわけがありませんね

物語は、『人殺しの写真をごらんになりますかな?』といわれてその写真を見せようとしたパルグレイヴ少佐の死から始まります。高齢であること、高血圧だったなどから、病死とかたづけられるのですが、ミスマープルだけは疑問を抱きます。人殺しの写真を見せようとした時に、ミスマープルの肩越しにそっくりな”誰か”を見つけ、マープルにその写真をみせることなく慌てて写真を隠した姿を思い出すからです。

いつものセントメアリー村ならば、親しい警部も警察関係者もいて、協力してくれる人もいるマープルですが、ここは西インド諸島、マープルを知ってる人はいません。カリブ海のホテルに滞在する全ての人が怪しく見える中で、ミスマープルはただ一人調査を始めるのです。
最初は自分の”どこかしら身体の調子が悪い老人”に見えるであろう特性を生かし、人の良いお医者さんを巻き込むところから始めるのも面白いです。
最後には、世界的にお金持ちで有名な、しかし身体が不自由で口うるさい傲慢な年寄りのラフィール氏まで味方につけるという所も面白いです。一人の老婦人でしかないはずのマープルに味方がどんどん増えて行くのです。
(ラフィール氏を気に入ったのか、アガサはまたマープルの長編『復讐の女神』にも登場させてます)

そして余談ですがミスマープルはよく、足を痛めます!
お年寄りの特権と言って良いでしょう(ポジティブに言っています)
マープルもお年なので仕方ないと言えば仕方ないのですがファンとしてはキタキタ!と思います。

推理やトリックについて読者に対してずるいな!と思うところもあるので★は少なめです
読者をだましてるわけではないのですが、語らない事実は存在しないのと同じなので、そこの所をどう捉えるかという所です。
クライマックスはやはり最後の犯人が分かるところですが、この時のマープルの描写がまさに女神様のようで素晴らしいです。

あまりにも印象的なのでアガサはこのマープルが書きたかったので、この作品を書いたのでは?と思ったくらいです。
ラストにこんな粋な演出を用意してるなんて憎いなと思います。
アガサは本当にマープルが好きなんだなと思います。
ぜひ、そこの所も楽しん読んで欲しいと思います。

ハロウィン・パーティー


イギリスのハロウィンパーティーを感じてみよう度  ★★★★★
アガサの分身?!推理作家のオリヴァが出てくる度  ★★★★★
リンゴ、リンゴ、カボチャじゃなくて?度      ★★★☆☆
純粋さやずるさは子も大人も関係なし度       ★★★★★
無人島に持って行きたい度             ★☆☆☆☆


ネタバレ無し紹介

ハロウィンとは具体的にはどんな事をするのか、私は今でも実はよく分かっていません。
日本に元々無い行事でなじみがないんですが、最近は楽しく仮装をしたりして『トリックアトリート』”お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!”っていってお菓子をもらいに行ったりって事を楽しんでるイメージです
でも、この本の中では、子どもを楽しますために地域の大人達があれやこれや用意したりしてる場面から始まりますので、日本で言うと自治体の子供会で用意するお楽しみ会に近いのかなと思います。
そんなアガサの時代のハロウィンの様子が分かるので、それを楽しみに読んでも面白いかも知れません。
(そしてよく言われる『トリックアトリート』”お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!”のシーンは出てこないのですよ!)

哀しいことに、そんな子どものお楽しみ会の合間に楽しんでたはずの子どもが殺されてしまう話なのです。

この話は、名探偵ポアロと推理作家のオリヴァが出てきます。晩年の方の作品になるので、作品中に過去に解決した事件の名前を出して懐かしくさせます。(ポアロが”ヘラクレスの冒険”などについて思いをはせたりしてファンの心をノスタルジックにさせるんですよ)、スペンス警視が引退して”元”警視で登場したりします。
ここで、推理作家のオリヴァについて説明しますと、この女流作家は、アガサ自身をモデルにしてると言われています。
実に、お茶目でおしゃべりで、リンゴ好き、ユニークな存在です。(本当にアガサはこんな感じの人なのかな?と、想像して楽しくなります)
今までの作品の中でも散々オリヴァがリンゴを食べるシーンが出てきます。
イギリスのリンゴは日本のリンゴと違って小ぶりのようですが、そのリンゴが殺人事件にも関わってきます。
”リンゴ食べゲーム”で使ったバケツと水、これが凶器になるんです。
(ハロウィン、といえばカボチャのはずですが、リンゴが目立つのも特徴的です)
そして、ある意味、人気推理作家のオリヴァがいるからこそ、起こる殺人だとも言えます。
それはどういう意味か、読んでみないと分からないのでぜひ興味がある方は読んで見てください。

ちょっとだけネタバレ

ミステリーファンで推理小説をたくさん読んでる人なら、このお話の中盤くらいで、犯人が分かるかと思います。
私も、犯人はこの人だろうって想像がつきました。アガサにしてはとても珍しいそれくらい単純なトリックです。
とはいっても、それを思い付いて矛盾のない内容にするのはやっぱりさすがアガサクリスティーです。
そこがどこか、楽しみに読んでもらいたい気持ちもあるので、紹介するのが難しいですね。
事件としてはハロウィンパーティーで女の子が殺されてしまい、その犯人捜し、となりますが、その子どもが言い放つ『私は殺人を見た』という嘘とも本当とも分からない言葉が原因なのではないか、とオリヴァはポアロに助けを求めます。
子どもたちにも人気がある推理作家オリヴァが、ハロウィンの子どもイベントのゲストとして呼ばれてるので、子ども達も殺人事件の話になり、その場の気を惹きたい子どもがついた嘘、ともとれる。
はたして子どもが見たという殺人は本当にあったのか?それが原因で殺された事に間違いは無いのか?
ポアロは捜査に乗り出します。
実はその殺人が起こった村は、昔一緒に事件を捜査していたスペンス元警視の終の住処なのです。(アガサファンとしては警察を引退してからも、ポアロと交流がある設定をうれしく思うのですが)
スペンス元警視から村人の情報を聞き出し、主要人物を訪ねて回り推理をしますが村人も一人一人、”こんな人いるなあ~”って人ばかりですから、人物描写が素晴らしいのです。
あっけなく事件は解決してしまうし、犯人は(私的に)すぐ分かってしまうし、無人島までは持って行って読む感じではないので、★は少なめですが。
見所、ならぬ”読所”としては、たくさんありますよ!
🎃ポアロの旧友のオリヴァ、スペンス元警視が出てくる
🎃アガサの時代のハロウィンの雰囲気が味わえる
🎃子どもの愚かさも狡猾さもよく出てる
🎃大人の愚かさも狡猾さもあいかわらず
🎃美男美女が出てきます
🎃前半の緩やかなストーリーから後半一気に解決に向かう時の緊迫の面白さ
🎃終盤の殺人の瞬間をまさに見ているかのような臨場感の表現(ぞっとしますよ)
といったところです。

ちなみに2023年映画化された『ベネチアの亡霊』は『ハロウィーン・パーティー』の原作を元にして作成されたと言われていますが、かなり別物となっています。オマージュ的な作品だと思います。映画は別物として面白かったです。
感想は全然別のブログのところに『ベネチアの亡霊』簡単に書いています。

ヒッコリーロードの殺人

たわいない話かと思いきや奥が深い度  ★★★★★
登場人物がばたばた死んじゃう度    ★★★★☆
ポアロの秘書レモン様が出てきます度  ★★★★★
無人島に持っていきたい度       ★★★★☆ 

この作品の舞台は、日本で言うところのシェアハウス、若い男女が共同で住むアパートのような住宅です。寮母さんや管理人さん、食事も付いているので、寮とホテルの中間っぽい感じでしょうか。そこで寮母をしていたのが、あのポアロの優秀な機械のような正確さを持つ秘書のミスレモンの姉であることから、雇い主のポアロは相談に乗るという形で事件にかかわっていくのです。登場人物も個性的で多国籍になり、アガサの感情の感覚で書いてるのか、わざとなのかかなり人物像に偏りがありますが身近に同じような人がいたのではないかと思ってしまいます。この作品の特徴として面白いのは意味のないと思われる靴の片方とか、聴診器とか、一見つながりがないものが、最後には一本の線で繋がるところです。そのためには、盗まれたのもの持ち主のそれぞれの性格や特徴が合ってなくては疑問が出るのですがそこはアガサのこと、ばっちり表現しているので点と線がつながります。そこに矛盾がないのが素晴らしいです。

ネタバレなしの紹介
ヒッコリーロードという番地にある、若い男女が住むシェアハウスで、色んな物がなくなっていきます。靴の片方、リュックサック、化粧コンパクト、廊下と玄関の電球、など他愛のないものばかりなくなるのですが、そこの寮母として働いているのがポアロの秘書ミスレモンのお姉さんなので、様子を見に行く事になります。初めて訪れるシェアハウスで、捜し物のなくなったはずの靴の片方を携えて現われるポアロは魔法使いのようです。そこもすばらしい演出です。この他愛もない窃盗事件の意見を求められたポアロは『ただちに警察に連絡しなさい』と言い放ち、まさかそんなことを言われると思ってなかった住人は騒然とし、そこから事件は隠されていた凶悪さがあぶり出されるのです。”うそつきは泥棒の始まり”と言いますが、この作品は、『泥棒は凶悪犯罪のはじまり』と言いたくなるような作品です。いろんな人間模様が絡み合いすべてが明るみになる時、読者は犯人を一転二転させられたことに”やられた!”と思うでしょう。登場人物も多くそれぞれが個性的なので何回か読むたび魅力も新たに発見できる作品だと思います。ちなみに、ヒッコリーという単語はマザーグースの一説にも登場しますがポアロが口ずさむところも出てきます。(本編とは関係ないのですがアガサはよくマザーグースを小説に登場させますね)

ここからは少しネタバレありです
まず、この作品の好きなとことはポアロの優秀な秘書ミス・レモンが事件にかかわるところです。ミス・レモンというのは完璧な秘書で事務的な処理については一切”失敗しない”のキャラなのです。唯一の欠点は人間についての興味がないという事なのです。そのミス・レモンに実は姉がいて、姉の方は世話好きで人間に興味がありシェアハウスの管理人をしているというから、面白いのです。姉ハバード夫人はミス・レモンとは違って人間の世話を焼くのが好きなのです。しかしそこで、不可解で不愉快な盗難事件が続いているため、悩んでいたのです。ミス・レモンは自分の雇い主のポアロに相談し、ポアロがその”ヒッコリーロード”にある管理人をしているシェアハウスに訪れ、強い口調で『警察にすぐ行きなさい』と言います。それを聞き驚いた住人のシーリア・オースティンが『私がやりました』と告白しに来ます。実は住人の心理学に興味があるコリン・マックナブを振り向かせたいとやってしまった戯れだったのです。その作戦が功を奏し、コリンとめでたく結ばれたシーリアだったのですが、ここら辺は恋愛の心理学についてもアガサはよくご存じで!って感じに、目も当てられないくらい恋愛チックです。甘くて熱々でたまらんわあって思ってると、そのシーリアが翌朝なぜか死体で発見されます。婚約して幸せの絶頂だったハズなのに、翌朝死体ですから大ショックの急展開過ぎます。盗んだいくつかは、弁償するという話だったのですが、電球やリュックサックについては知らない、もしくは言葉を濁します。そこらへんも、うまいなあと思うんですが、それが事件の謎の鍵になるのです。結局は、寮を巻き込んでの犯罪の巣窟だったのです。ミス・レモンの姉は管理人をしてますがオーナーは別にいて、姉は犯罪には無関係でした。ですがオーナー、ニコレティス夫人は犯罪に加担していたため、殺されてしまいます。(戸棚の酒瓶の秘密とか巧妙に書かれていますが割愛します)
最初から一番犯人らしくもあり、それで却って犯人らしくなかった住人が黒幕として、ポアロに最後にはあぶりだされます。本当に見事な話の組み立てです。登場人物が個性的で、ドラマにしたときそれぞれ俳優さんは誰がいいかな、なんて想像してしまう作品でそこも実に面白い作品だと思います。
ちなみに、ポアロの別作品『死者のあやまち』の中に似たようなトリックが出てきます。どこが似てるかはこれから読む人のお楽しみとして言わないでおきます。

スタイルズ荘の怪事件

犯人が一転二転三転する度       ★★★★★
アガサの才能は最初からすごい度    ★★★★☆
ポアロつかみはOK 度          ★★★★★
ヘイティングスおちゃめ度       ★★★★★
無人島に持っていきたい度       ★★☆☆☆ 

アガサの記念すべき推理小説一作目です。
アガサ自身が長く付き合うことになる名探偵ポアロがここでで登場します。
ポアロの語り部で相棒のヘイスティングズももちろん出てきます。
ヘイスティングズポアロの友人であります。
この2人の性格と年の離れた関係性がこの作品を面白くしています。
トリックも、この当時の時代だから成立すると言うこともありますが、看護師の経験があるアガサならではの知識があってこそのしっかりとした小説になってます。


ネタバレなしの紹介

”スタイルズ地方の地主の
奉仕活動家女主人殺人事件”


傷病兵として休暇中のヘイスティングズが旧友の勧めで旧友の実家のあるスタイルズ荘に招かれ、ゆっくりすごそうかと思った矢先に継母の女主人が毒殺されてしまいます。
その犯人探しになりますが、家族も誰もが遺産を巡って動機があって怪しいのです。


読み進めていくと、一転二転して新しい事実がでてくるし遺言状は何枚も出てくるし、誰かが誰かをかばっているのかややこしい状況も出てきて、怪しい人ばかりでいったい誰が犯人か全く分からないのです。


後妻業ならぬ、後夫業的な若い夫もあやしいし、不倫もあり、ワイドショーのネタ満載です。
殺された女主人にお世話になったことがあるポアロもたまたまスタイルズ地方を訪れており、必然的に事件解決に乗り出す事になります。


ヘイスティングズの独り言にヒントがあるのですが基本ポアロの推理のすごさを助長させるだけだったりします。その独り言を分かった今でも私にはさっぱり推理できませんからアガサのすごいところはつまりはアガサ自身がすごい名探偵だというところですね。(今更ですが)
ヘイスティングズの惚れっぽいところとか何回も同シリーズを既に読んでる私は知っているので、改めて第一話のこの『スタイルズ荘の怪事件』を最初からヘイスティングズはこんなに惚れっぽいんだ、若いなあってニヤってするところもあります。
アガサはポアロを一回切りの登場で、続き物を書く気はなかったと聞いたことがありますが、この作品で意外にも人気になってしまい必然的に書き続けることになる記念すべき作品です。

私的には登場人物、特に殺された女主人に自分は共感を持てないし魅力を感じないので(失礼ですね)作品的にはあんまり好きな作品ではないんです。しかし、最後の大どんでん返しに読者は驚くと思いますし、記念すべきポアロの初挑戦推理小説ですから読んでおいて損はありません。。
私が無人島に持っていく本としては、他のポアロ作品の方が私は大好きすぎるので★少なめですが、でも、あくまでも個人的な好みの理由なので面白い推理小説の1つであることに変わりありません。
ポアロが好きなら是非読んでいただきたい作品です。

杉の柩

愛憎の表現のロマンチック度 ★★★★★
最後のどんでん返し驚き度  ★★★★★
ポアロの冴えわたり度    ★★★★★
無人島に持っていきたい度  ★★★★★


個人的に大好きな作品です!
この作品は主人公はポアロでなければ解けない謎ではないかと思われるくらい、依頼人にとって最初から不利な事件なのです。
小説の最初から、エノリアの有罪が漂っています。被告人エノリアは、お金もあり洗練されている聡明な美女です。そこはまず大事なコトになりますね。彼女には幼い時から決められたロディーという婚約者がいるのですが、実はエノリアはこのロディーをめちゃくちゃに愛しているのです。しかし、いよいよそのロディーと結婚間際という時にメアリーという若い女が現れに奪われてしまいそうになるのです。メアリー・ゲラードは使用人の娘なのだが、特別に雇い主によって教育もバッチリ受けて性格も可愛く、容姿もカワイイ。そのメアリーに、愛しい婚約者のロディーが心奪われてしまう、もしかしたら財産も奪われかねないピンチな自体です。エノリアは表面的に冷静さを装いますが心の中は激しい嫉妬がうずまきます。まさにそんな時にメアリーが殺されるのです。エノリアには動機もある、機会もある、そして、なにより被害者を殺したいと思う感情が渦巻いたことを読者にも明確に匂わせているので、エノリアは犯人として裁判にかけられていても仕方がないのです。しかし、そこに、エノリアに恋する男、ピーター・ロード医師が登場します!(ちなみにエノリアは何とも思ってません、何ということでしょう!)ピーター・ロード医師が片思いのエノリアのために有名なポアロに無罪を証明してほしいと依頼することで、推理小説となっていくのです。

まさに、愛の三角関係物語!しかし、ここからがすばらしいミステリーの幕が開きます。
最後の謎解きが裁判形式なのも、珍しいです。アガサの看護師時代の知識も出てきます。
ちょっと最後にバタバタとご都合主義の感じもありますけど、それを吹き飛ばすぐらいの説得力はあります(多分)
自分が感銘を受けたのは、アガサの愛に関するうんちくの言葉やセリフの数々。いろいろあったアガサですから説得力がありますね!
ポアロは一生独身ですが、アガサが書く主人公だからでしょうか?愛に関して決して無知ではありません。(と思われます)
最後の最後にポアロが放つ言葉が、実にかっこよく自分は大好きなのです。
読んで損はありません!

ひらいたトランプ

ゾクゾク度        ★★★★★
数回読んで味を占める度  ★★★★★
設定の面白さ度      ★★★★★
無人島に持っていきたい度 ★★★★★
 
これは、エルキュール・ポアロ作品です。
ひらいたトランプというように、トランプのゲームが出てきてきますが、ババ抜きとかじゃないですよ!この作品は日本人にはなじみのないゲームが出てきます。ルールは分からないけれど、登場人物が熱狂している描写が出てくるので、面白いゲームなんだろうな、と思われます。賭け棒とか出てくるし、賭け麻雀に近いかもしれません。もちろん、そのトランプゲームが、事件の大事な要になってきますが、ルールを知らなくとも楽しめる作品です。”こんなトランプゲームがあるんだな”で、いいので、読み進めて下さい。人間の本質をあぶりだしていく、とてもゾクゾクする作品です。自分はとてもこの作品が好きですね。

ネタバレなしの紹介

この作品が他と違っているのは、ここに出てくる登場人物は全員、殺人を犯してる事。でも、法の合間をかいくぐって、誰もなんの刑も受けてはいない。え?ネタバレじゃないのかって?大丈夫です。そんなことではこの作品は語れません。そんな犯罪者たちをコレクションして楽しんでいる”シャイタナ氏”が一番悪いのですが、というお話。トランプゲームの様子、やり方には人間性が出るということからのアガサの人間観察の鋭さがすばらしいです。最後の最後まで犯人が分からない、読者を裏切らない面白さがあります。私は何回も読んでますが、結末を知っててもやはり面白いです。私はこの作品が好きなので定期的に読みたくなる一冊なのです。