エッジウェア卿の死

ポアロがだまされる度    ★★★★☆
犯人に同情できない度    ★★★★★
女優の華やかさ度      ★★★★★
無人島に持ってきたい度   ★☆☆☆☆

ネタばれなしの紹介
この作品は読み始めからドラマティックです
華やかなショービジネスが舞台、美男美女が出てきますし何しろポアロの友人のヘイスティングズが最初に”ある非常に魅力的な一女性の心からの願いを実現することにもなる”などと思わせぶりに読み手を誘うからです

この頃のショービジネスの風景も今と変わりがないようで、結婚離婚の繰り返しで世間を賑やかすのは定番
そこにはお金とスキャンダルがてんこ盛りです
そんな中、よりによってポアロに離婚問題の解決を依頼する美人女優が出てくるのです
それがエッジウェア卿の奥様、ジェーン・ウィルキンスンなのです
エッジウェア卿は大金持ち、しかし性格に難ありで有名なひとなのですが前の夫人ともすったもんだでなかなか離婚に応じなかった過去があります
それが分かっていながら、その問題のエッジウェア卿と結婚するなんて女優っておかしな生き物ですねっと凡人の私などは思うのですが、大金持ちというのは変人を魅力的に魅せるものですから何回も問題おこしつつ結婚しちゃうわけです(だろうと思われます)
なので簡単にはいかない離婚に応じるように説得して欲しいとポアロにお願いするのも分からないではないのですが、そもそもポアロがやることがない案件です
自ら面白いと思う事件しか引き受けないポアロも強引な女優に無理やりその離婚問題を引き受けさせられますが
どちらかというと、ヘイスティングズがその女優のファンだったから、と言うのが理由ではないかと思います
ヘイスティングズは女性に弱いんだなと毎回思いますが、今回もその傾向は顕著です

とにかくその離婚問題が事件の発端になりますが離婚問題はあっけなく解決します
さすがポアロ!と言いたくなりますが別にポアロの手柄ではありません
ポアロが離婚問題に着手する前にエッジウェア卿はすでに離婚に応じていたというのです
そこもこの作品を惑わせるひとつの要因です
ウソをついているのは夫か夫人かどっちなのか?どちらもだまされているのか?
題名通りポアロが会ったその後にエッジウェア卿が殺されて亡くなるので、いうなればポアロは無理やり事件に巻き込まさせられたと言っていいと思います

離婚したい理由が、他の男と結婚したいからと言ってのけていた夫人の女優ジェーンは限りなく怪しい
しかし、完璧なアリバイがある
犯人は今の夫人と結婚したい新しい男なのか、前の夫人との間に出来た娘なのか、それとも?
一体エッジウェア卿を殺したのは誰なのか?
事件はどのように解決出来るのか?そんな作品です


アガサの作品にはいくつか女優が出てくる作品があります

女優ってこういう生き物でしょって言わんばかりのアガサの表現の面白さがそこにあります
例えば『鏡は横にひび割れて』なども女優が登場しますが、こちらの女優はまたちがう表現をされてます
沢山の女優さんの表現がある中で自分がどんなに魅力的か分かっている女優のエゴイストの表現は上手いなと思います
そして同時に芸術として賞賛される女優も出てきたりします
今作ではカーロッタ・アダムズという女優の存在が面白いです
とても面白いなと思います
それだけでも読む価値はあるかもしれません

それをふまえた上で、
この『エッジウェア卿の死』重要人物の女優がちょっと大げさな描写かなと思いますし(そこが面白いと言えば面白いけれども)そこは置いといても、今作のポアロの推理はちょっと冴えが良くない気がするんです。ヘイスティングズの気に入った女性への盲目度は半端ないですし。(アガサはわざとでしょうが)そんなわけでこの作品が好きですか?と聞かれれば 私はあんまり好きではありませんと答えますがこの作品を面白いか、と言われれば、面白いと答えるでしょう
矛盾するかも知れませんがそんなわけで無人島までは持っていかない本ではあるんですけど単純に見えて複雑な事件にしている、あり得ない設定のそんな作品とだけ言っておきます







娘は娘

探偵モノではないが気になる一冊度    ★★★★☆
娘を持つ人が読んでおきたい度      ★★★★★
成長するって時間がかかる度       ★★★★★
アガサの男女感がわかる度        ★★★★☆
アガサはこういう本もいい度       ★★★☆☆
無人島に持っていきたい度        ☆☆☆☆☆

アガサクリスティーと言えば『ポアロ』や『ミスマープル』など探偵が出てくるミステリーが有名でしょう!
しかしこの作品は探偵モノではありません
私も、アガサが推理もの以外の小説を書いていることは、かなりの探偵小説を読んでから知りました
アガサの別の名のメアリ・ウエストマコットで書かれた探偵もの以外の作品です
なので、アガサクリスティーの探偵作品のファンには戸惑いの一冊かもしれません。
しかし『春にして君を離れ』を読んでその世界を理解した後の私には読みたいなという気にさせました。
(詳しくは『春にして君を離れ』のところをご覧ください)
簡単にいうなら人間ドラマです
例えるなら日本のドラマで言うなら『渡る世間は鬼ばかり』の親子版という感じでしょうか
(ざっくり言うと)

最初は深い愛をもつ典型的な母に焦点があります
娘の幸せだけを願う母、盲目的かと思えるほどに娘に服従し、娘は自分ではそうとは分からず母に依存している関係です
娘の身体が大きくなるにつれ、しかし心はまだ身体に追いつかないアンバランスな状態も良く書かれています。
ひとつ思うのは、母親もこういう大人になりかけの娘を育てるのは初めての事だということ。母親自身が無事に大人になったという経験はありますが、娘が大人になるということは全く別の話なのだとこの作品を読んで分かりました。
まず母がシングルマザーであり、新しい恋に生きようとする可能性、自由があるということ
この母親に新しい恋人が出来る設定もよくあるようで、現実にはとても難しい問題があることもある程度想像がつくでしょう
この作品では娘が子どもであることの武器を総動員して母の幸せを阻止するのです

子どもの気持ちは『お母さんの為を思って』なのであるから、一番始末が悪い
『あんな男と結婚したらお母さんは不幸になる』と、母の恋人の欠点だけをことさら大きく宣伝し娘自ら思い込み
母の恋人は敵であるから、全力で攻撃をしまくるのである
ある意味それは正しい
なぜなら、完璧な人などいないから、娘が”この人のここはダメだと思う”は正しいのである
一方、母は大人であるから人は誰も完璧ではないことを知っている。
恋をするとは結婚するとは、夫婦になるということは
完璧な人同士だから幸せになるとは限らないということも知っている
結局は娘の幼さ故、母の愛を独占したいためということも分かりながら、母親は自分の幸せを”娘の為に”苦しくてたまらないのに手放すのである

そういうわけで。。。。
結果的には、相手の幸せを願ったはずなのにそれが相手の幸せにならない愚かさを実に巧妙に書いています
何が言いたいかというと、この作品には人生の滑稽さと未熟さと犠牲の醜さを書いていると言えるのではないだろうか
傍から見たら、冷静に判断できるが(この作品を読んだ後の自分というのもあるが)
もし、当事者であったなら、きっと自分も”何かに負けて”この母のように、犠牲の愚かさ”を選択するのであろうとも思った
小説の中の母は恋人と娘の二択を迫られて、娘のことを取る構図となっているが、結局はこの母は、その時どっちを選んでも悩み苦しい結果になっただろうとは思う。そういう人であろうから。
小説のように娘を選んだ母の立場で物を言うなら、他人から観た自分も意識したり、娘に恩を売る気持ちがあったかもしれない。
でも『誰かの為の犠牲』と自分が思っている限り自分の幸せもない(なかなかそれに気がつかないけど)

これが他人なら違う感想もあるかもしれないが、母娘なので、他の人間関係よりは干渉せざるえないことも『娘は娘』の題に表されているかもしれない。(ちなみに『母と息子』だとこうはならない、絶対に違う。)
作品の後半はそんな母娘の対決になるのですが、そこが唯一謎解きのようにスカッとさせます

そんなわけで、読み応えある一冊ではありますが、私が無人島にもって行くには湿っぽいし、無人島に行ってまで親子関係の謎解きはもうイイかな、と思うので、持っていきたい気持ちはありません(ばっさり)でも、良い作品ですよ!
親子を取り巻く人物がほんとうに面白い。腐れ縁的な悪友もそう、ばあや的なお手伝いさんもすばらしい。
読む人の立場によって感想も違ってくるであろうと思います
でも、声を大にして言いたいですが、ミステリーとしての謎解きはなくとも小説としてとても良い小説です


  

象は忘れない

アガサファンなら読んでおきたい度    ★★★★★
ポアロファンなら読んでおきたい度    ★★★★★
大逆転度                ★★☆☆☆
無人島に持ってきたい度         ★★★☆☆ 

実は私が一番最後に紹介したかった作品です
なぜならアガサが書いたポアロものの本当に最後の作品だからです
チョット詳しい方ならポアロの最後の作品と言ったら『カーテン』じゃないのって言われるかも知れません
アガサの死後に発表するよう遺言され、その通りに世間に発表された作品は確かに『カーテン』です
詳しくはいつか「カーテン」を紹介したときにしたいと思いますが、とにかく実際にポアロもので「カーテン」後に書かれたのはこの『象は忘れない』なのです
なので、作中に昔に解いてきた、過去に遡って解決する『5匹の子豚』とか『ひらいたトランプ』とか他にもそんな作品名が出てきて、読みながらああ、本当にコレはアガサのポアロの最後の作品なのかとしみじみ思います
(今回紹介に至ったのは、世界情勢でのいろいろや災害いろんなことが起こるので、明日を後悔しないように、紹介したい作品を早めにしておこうと思った次第です、、、おおげさですけどね!)

過去の事件を掘り起こして真相にたどり着くポアロお得意の回顧推理ストーリーです
過去の事件自体は悲惨で悲しいのですが作品の構成はとても粋な作品です
ポアロの友人小説家のオリヴァが受けた依頼が発端で、過去の事件の真相を暴いていきますがオリヴァ自身もあちこち話を聞きに行く活躍ぶりです
その報告をもとにポアロは順序立て、真相を組み立てていきます
友人で小説家のオリヴァは、売れっ子でまるでアガサの分身のようです
有名人としてパーティーに呼ばれて行くことの滑稽さや“ファンです”と言われることの苦痛なども書いていて、この作品はその気の進まない催しの描写などから始まります
アガサもそんな気の進まないパーティーに出ていたのかもと思ったりして面白いです
この本の題名”象は忘れない”は”象は決して過去の事を忘れない”親切にしてくれた人の顔も、危害を加えた人の事も全て覚えている、その象の特性をアガサ自身も気に入っていたのでしょう
関係者の過去を思い出を『象』と名付けて“象をさがしに言ってくるわ”とオリヴァに言わせながらユーモアにして捜査に出かけていくことから題名が付いています
頻繁に”象”という言葉が出てきますが実際に本物の象は出てきません

トリックとしては、難しくはないです。今となってはミステリー好きなら思い付くネタかもと思わないでもないですし、トリックというよりは人間関係、動機は何かという謎解きになると思います。ちょっと感傷的な作品です
なので自分としては無人島まではもって行くにはちょっと湿っぽいなという感じです
いつも強気なポアロが自分はすでに過去の探偵なんだと自覚しているようなシーンもあって切ないです
自分の灰色の脳細胞に絶対的な自信のある傲慢気味なポアロがですよ?今まであり得なかった事です
対比として未来に生きる若い人間のたくましさを書いているのも、アガサ的に最後のポアロ作品『カーテン』の後の作品らしいと言えばらしいです。
作品の中に重要なアイテムの住所録が出て来るのですが、その年代別の住所録の年代のままに作品も書かれているのを知った時、直接事件のトリックとは関係ないですがアガサが生きていた時代をリアルに感じることが出来て興味深いと思います
最後のオリヴァの台詞を読み終えたとき、アガサはこの一言が最後にいいたかったのかなとハッとします

作品のあらすじ
小説家のオリヴァはあるパーティーの最中、一人の女性に頼み事をされます
以前オリヴァが名付け親になった女性がうちの息子と結婚する予定だが、その女性の親が過去に謎の心中事件を起こしている。男親の方が母親を殺してから自殺したのか、または逆なのかまたは第3者の殺しの可能性があるのか、それによっては息子の結婚に賛成しかねる、そんな内容です。オリヴァにとったら、過去何人もの名付け親になってるうち一人のことだし、いきなりそんなこと言われたって“いい迷惑”でございます。しかしまるっきり無視も出来ないので、そのパーティーの帰りに、早速ポアロの家に押しかけ(事前に電話するだけマシ)“こんなこと頼まれたのよ!過去の事件を調べるのあなた得意でしょう!”てな具合でまくし立て、ポアロに協力させるのです。遠慮なんてオリヴァに存在しません
ポアロは、その時にはすでに引退状態で、引き受けるギリなんてありませんが、オリヴァはポアロを上手に使うすべを知っています。そんなわけで引き受けたポアロとオリヴァは事件の真相に迫っていくのです

オリヴァに依頼してきた女性にも、秘密があり、ただ息子を心配するだけじゃない”何か”もあぶり出します
依頼主はそこまで暴かれたくなかったでしょうが、ポアロはお構いなしです。
とにかく関係者からの聞き取り、噂話の収集から始まります。過去の話ということもあり、聞く人によって事件の見方が違うことや、同じ家族の印象も違うので、何が本当か分からなくなってきます。それでも、地道に過去の思い出を聞き取りに旅に出るオリヴァとポアロがいて、些細なこと、例えば飼っている犬のことやかつらのことなどから真相が解かれたとき、なるほどなあ、、、と思います



ホロー荘の殺人

個性的な登場人物がいる度     ★★★★★
トリックの複雑度         ★★☆☆☆
ポアロの活躍度          ★☆☆☆☆ 
アガサの芸術家に対する秀逸な表現 ★★★★★
無人島に持っていきたい度     ★★☆☆☆

ネタばれ無しの紹介
この作品は一見単純に見えます。明らかに最初に犯人が分かるからです。
(しかしそういう単純な話ではもちろんありません)
なにせ私がこの作品を最初に読んだのが中学生でしたから『なんて単純な話だろう、ポアロが出る幕もない!』などと思ったものです。今思えば、人生経験も少ない時の浅はかな幼さ故なのですが。
それと同時に物語を引っ張る女性、”ヘンリエッタ”という芸術家が出てくるのですがその女性のようになりたいとあこがれを抱きました。彼女に自立と愛する人に媚びない強さ(当時はそう思いました)を感じたからです。
魅力的で個性的な女性5人が出てきます。幼い私はどんな大人の女性になろうかと思ったときにサンプルがこの本に出てくる、と感じていました。あこがれのヘンリエッタと対照的な女性”ガーダ”にはイライラしましたし、ホロー荘の女主人の”ルーシー”にはまさかこんな支離滅裂な人いるかしら?と思ったし(でも、社会に出たら、意外といました(^_^;))親近感を覚えるのが”ミッジ”、絶対に共感できない”ヴェロニカ”これだけで、充分かき回せそうな設定です。

さて話が少しずれましたね!
そもそもこの作品は読んでその名の通り『ホロー荘』で起こる殺人の話なのですが、『ホロー荘』というのは富裕層の持つ邸宅の名前です。そこに仲良し親族が集まるのが年中行事になっているわけです。それだけでは殺人の臭いはしませんね?殺人事件が起こるまでに、実に本編の3分の1読み終わらなければなりません。全ては殺人が起こるまでの入念な舞台装置を設置するためなんですが、その間に男女のドロドロなドラマがありまして今から思えば中学生には刺激が強いですね!パワハラはあるし浮気はするし!(詳しくは言いませんが)
すっかり整えられた舞台で、起こる殺人(に見える情景)をポアロは目撃して推理が始まるのですが、それまでに読者は前の日に何がこのホロー荘で起こったかは分かっています。それでも次の日のあまりにも急展開な殺人の情景をポアロの目線で一緒に知らされるので読者はこれは殺人が起こったという合図なんだろうか?どうなんだろうか?なんて混乱すると思います。そこが新鮮です。
この作品を推理小説とするにはあまりにも読者に対して証拠が少なすぎる気がするので、トリックの複雑度は★少なめです。犯人が”この人が犯人なんだ?”と共感出来ない自分がいるので、無人島に持っていきたい度も少なめですが、アガサの”脚本”の上手さにはうなります。
アガサの芸術家に対するリスペクトを感じる作品でもあります。他の作品『5匹の子豚』でも芸術家に対してのリスペクトを感じることが出来ます。

カリブ海の秘密

マープルのかっこよさ   ★★★★☆
マープルの足を痛める度  ★★★★★
ちょっとずるい推理度   ★★★★★
無人島にもって行きたい度 ★★★☆☆

 

ネタバレあまり無しの紹介
アガサクリスティーの作品の中のミスマープルシリーズ
大人気の安楽椅子探偵ミスマープルの長編です
探偵といっても見た目はどこにでもいるようなおばあさんですから周りはその見た目に油断してしまいます
いつも村にいるはずのミスマープルが今回は海外にお出かけをしているところが特別な作品です
セントメアリー村に住むマープルが甥のデズモンドの好意で南の島へ療養に行くことになるのですが、アガサクリスティーはミスマープルにご褒美のつもりで南の島へ行って欲しかったかもしれません。
お金持ちのリゾート地、カリブ海が舞台でミスマープルが活躍するわけなのでときめかないわけがありませんね

物語は、『人殺しの写真をごらんになりますかな?』といわれてその写真を見せようとしたパルグレイヴ少佐の死から始まります。高齢であること、高血圧だったなどから、病死とかたづけられるのですが、ミスマープルだけは疑問を抱きます。人殺しの写真を見せようとした時に、ミスマープルの肩越しにそっくりな”誰か”を見つけ、マープルにその写真をみせることなく慌てて写真を隠した姿を思い出すからです。

いつものセントメアリー村ならば、親しい警部も警察関係者もいて、協力してくれる人もいるマープルですが、ここは西インド諸島、マープルを知ってる人はいません。カリブ海のホテルに滞在する全ての人が怪しく見える中で、ミスマープルはただ一人調査を始めるのです。
最初は自分の”どこかしら身体の調子が悪い老人”に見えるであろう特性を生かし、人の良いお医者さんを巻き込むところから始めるのも面白いです。
最後には、世界的にお金持ちで有名な、しかし身体が不自由で口うるさい傲慢な年寄りのラフィール氏まで味方につけるという所も面白い。一人の老婦人でしかないはずのマープルに味方がどんどん増えて行くのです。
(ラフィール氏を気に入ったのか、アガサはまたマープルの長編『復讐の女神』にも登場させてます)

そして余談ですがミスマープルはよく、足を痛めます!
この作品も傷めてます!

お年もお年なので仕方ないと言えば仕方ないのですがファンとしてはまたなの?
キタキタ!と思います。(心配しなさいよとも思いますが)

推理やトリックについて読者に対してずるいなと思うところもあるので★は少なめです
読者をだましてるわけではないのですが、
語らない事実は存在しないのと同じなので、そこの所をどう捉えるかという所です
クライマックスはやはり最後の犯人が分かるところですが
この時のマープルの描写がまさに女神様のようで素晴らしいです。

あまりにも印象的なのでアガサはこのマープルが書きたかったので、この作品を書いたのでは?と思ったくらいです。
ラストにこんな粋な演出を用意してるなんて憎いなと思います。
アガサは本当にマープルが好きなんだなと思います。
ぜひ、そこの所も楽しん読んで欲しいと思います。

ハロウィン・パーティー


イギリスのハロウィンパーティーを感じてみよう度  ★★★★★
アガサの分身?!推理作家のオリヴァが出てくる度  ★★★★★
リンゴ、リンゴ、カボチャじゃなくて?度      ★★★☆☆
純粋さやずるさは子も大人も関係なし度       ★★★★★
無人島に持って行きたい度             ★☆☆☆☆


ネタバレ無し紹介

ハロウィンとは具体的にはどんな事をするのか、私は今でも実はよく分かっていません。
日本に元々無い行事でなじみがないんですが、最近は楽しく仮装をしたりして『トリックアトリート』”お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!”っていってお菓子をもらいに行ったりって事を楽しんでるイメージです
でも、この本の中では、子どもを楽しますために地域の大人達があれやこれや用意したりしてる場面から始まりますので、日本で言うと自治体の子供会で用意するお楽しみ会に近いのかなと思います。
そんなアガサの時代のハロウィンの様子が分かるので、それを楽しみに読んでも面白いかも知れません。
(そしてよく言われる『トリックアトリート』”お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!”のシーンは出てこないのですよ!)

哀しいことに、そんな子どものお楽しみ会の合間に楽しんでたはずの子どもが殺されてしまう話なのです。

この話は、名探偵ポアロと推理作家のオリヴァが出てきます。晩年の方の作品になるので、作品中に過去に解決した事件の名前を出して懐かしくさせます。(ポアロが”ヘラクレスの冒険”などについて思いをはせたりしてファンの心をノスタルジックにさせるんですよ)、スペンス警視が引退して”元”警視で登場したりします。
ここで、推理作家のオリヴァについて説明しますと、この女流作家は、アガサ自身をモデルにしてると言われています。
実に、お茶目でおしゃべりで、リンゴ好き、ユニークな存在です。(本当にアガサはこんな感じの人なのかな?と、想像して楽しくなります)
今までの作品の中でも散々オリヴァがリンゴを食べるシーンが出てきます。
イギリスのリンゴは日本のリンゴと違って小ぶりのようですが、そのリンゴが殺人事件にも関わってきます。
”リンゴ食べゲーム”で使ったバケツと水、これが凶器になるんです。
(ハロウィン、といえばカボチャのはずですが、リンゴが目立つのも特徴的です)
そして、ある意味、人気推理作家のオリヴァがいるからこそ、起こる殺人だとも言えます。
それはどういう意味か、読んでみないと分からないのでぜひ興味がある方は読んで見てください。

ちょっとだけネタバレ

ミステリーファンで推理小説をたくさん読んでる人なら、このお話の中盤くらいで、犯人が分かるかと思います。
私も、犯人はこの人だろうって想像がつきました。アガサにしてはとても珍しいそれくらい単純なトリックです。
とはいっても、それを思い付いて矛盾のない内容にするのはやっぱりさすがアガサクリスティーです。
そこがどこか、楽しみに読んでもらいたい気持ちもあるので、紹介するのが難しいですね。
事件としてはハロウィンパーティーで女の子が殺されてしまい、その犯人捜し、となりますが、その子どもが言い放つ『私は殺人を見た』という嘘とも本当とも分からない言葉が原因なのではないか、とオリヴァはポアロに助けを求めます。
子どもたちにも人気がある推理作家オリヴァが、ハロウィンの子どもイベントのゲストとして呼ばれてるので、子ども達も殺人事件の話になり、その場の気を惹きたい子どもがついた嘘、ともとれる。
はたして子どもが見たという殺人は本当にあったのか?それが原因で殺された事に間違いは無いのか?
ポアロは捜査に乗り出します。
実はその殺人が起こった村は、昔一緒に事件を捜査していたスペンス元警視の終の住処なのです。(アガサファンとしては警察を引退してからも、ポアロと交流がある設定をうれしく思うのですが)
スペンス元警視から村人の情報を聞き出し、主要人物を訪ねて回り推理をしますが村人も一人一人、”こんな人いるなあ~”って人ばかりですから、人物描写が素晴らしいのです。
あっけなく事件は解決してしまうし、犯人は(私的に)すぐ分かってしまうし、無人島までは持って行って読む感じではないので、★は少なめですが。
見所、ならぬ”読所”としては、たくさんありますよ!
🎃ポアロの旧友のオリヴァ、スペンス元警視が出てくる
🎃アガサの時代のハロウィンの雰囲気が味わえる
🎃子どもの愚かさも狡猾さもよく出てる
🎃大人の愚かさも狡猾さもあいかわらず
🎃美男美女が出てきます
🎃前半の緩やかなストーリーから後半一気に解決に向かう時の緊迫の面白さ
🎃終盤の殺人の瞬間をまさに見ているかのような臨場感の表現(ぞっとしますよ)
といったところです。

ちなみに2023年映画化された『ベネチアの亡霊』は『ハロウィーン・パーティー』の原作を元にして作成されたと言われていますが、かなり別物となっています。オマージュ的な作品だと思います。映画は別物として面白かったです。
感想は全然別のブログのところに『ベネチアの亡霊』簡単に書いています。

春にして君を離れ

もしかしたらあなたを変える一冊かもしれない度  ★★★★★
傑作度               ★★★★☆
人と年齢を選ぶかもしれない作品度        ★★☆☆☆
探偵らしさ                   ☆☆☆☆☆
無人島に持って行きたい度            ★★☆☆☆ 

ネタバレなしの紹介
これは覚悟して読まなければなりません。なぜなら、読み終わった後にあなたを変えるかもしれないからです。
もしくは、全く響かないかもしれない。
なぜなら、そういう私が最初にこの小説を読んだときは”なんて退屈な話だろう”と思ったのです。読んだのは小学校のころでしたから無理もないかもしれません。アガサクリスティーの推理小説にハマりだしたころで、ポアロやマープルなどと同じ推理小説と疑わずに読んで、探偵も殺人も出てこないのですから一旦『?』となった作品です。
あらすじは、ありふれた主婦が主人公の物語。優しい夫、子どもにも恵まれて幸せに暮らすジョーンの人生のある一角を描いています。結婚した娘の病気を知りバクダッドに看病に出かけたジョーンはその帰りに古い友人と出会い、さらに宿泊所に留まることによって何かが彼女に起こるのです。
女として、母として光り輝く昼間にいたと思っていたのに気がつけば闇が迫っているかのようなぞわっとする感覚。
最後まで読まなくては彼女の真実にはたどり着けません。

これがサスペンスだと気づくには時間がかかりました。小学生の自分には気づけなかったのです。
再度私が読んだときは、いい大人になってからでしたが、その”意味”に気づいたとき、この小説の価値が一気に代わりました。その時の衝撃は面白いほどでした。


ネタバレギリギリの内容
私にとってこの本の中で印象的なのは夕暮れの”二人”のシーンでした。ここの描写は、素晴らしいです。こんな文章を書きたいと、ある意味憧れにしている文章のひとつです。
後は、思い出の中の恩師たちが思い出されて、ジョーンをゆさぶるところも巧妙です。すべては最初に出てくる旧友との再会がそうさせるという無理のない流れです。それまでは本当に何ごとも順調な幸せなジョーン。そして、バクダッドの宿泊所で起こった唐突な出来事がすべてを変えます。しかし、それだけでは終わりません。
最後に列車の中で出会う女性が自分には不気味なのです。一見、ただの通りすがりの乗客にしか過ぎない人物のように描かれていますし、ある決意をもったジョーンの救いのようにも思いますが、果たして救いだったのでしょうか?はたしてなんのためにアガサはこの女性に会わせたのだろう、もし出会わなければ、、、ジョーンの運命も大きく変わったかもしれないのです。それくらい最後に出会う女性の存在が私には異質に思います。
最後まで読んで、ようやく主人公のジョーンが、やはり誰よりも幸せな女性、でもそうではない側面があると言うことを読んだ自分自身が感じずにいられないのです。
そして、この小説は歴史的に世界が暗い争いの影に覆われてくような描写もあります。そこも西暦2022年の夏に通じる一冊だと思います。

招かれざる客(戯曲)

アガサクリスティーのミステリー戯曲のひとつです。題名が秀逸です!
ポアロやマープルのような有名な登場人物は出てこない戯曲ですが、最初からミステリアスに登場する主人公がばっちり読者をつかみます。
そして、主人公は美人ですが、男運が悪い!と、思ってしまうような展開に、そういう方向で読んでも、違った印象の作品になるかもなと思います。

戯曲としての面白さ   ★★★★★
ドラマティック度    ★★★★★
どんでん返し度     ★★★★★
この人妻を演じてみたい度★★★★★
無人島に持って行きたい度★★★☆☆

ネタバレなしの紹介
この作品は戯曲、つまり舞台で上演されるのを前提とした作品です。戯曲とは台本のような、つまりはシナリオなので、本を開くと、しょっぱなから舞台の配置図の記載があってそこから読み始めるようになってます。そこで読み慣れてない人は『ん?』と思うでしょう。大丈夫、十分面白く読めます!長編ほどには時間がかからずサクッと読めますし舞台としてどんな風に俳優が動くのかなとか、思ったりしながら読むのもありです。戯曲としては『ブラックコーヒー』というポアロの主人公のものがアガサの初めて書いた戯曲になりますが、この『招かれざる客』は、有名な登場人物はいない作品です。つまりポアロなどの有名な探偵は出てきませんがすでにヒットを何本も飛ばしているアガサの腕は確かで、登場人物が無名であっても面白さへの期待は十分なのです。よくできた題であって、誰が誰にとって招かれざる客なのか?読む前から想像力に火がつきそうな題名です。そもそも、アガサは題名の付け方が抜群にうまいのであります。印象的な題としては『そして誰もいなくなった』『ABC殺人事件』『春にして君を離れ』などがあると思いますが、この”招かれざる客”も優れた題名だと思います。


あらすじ
車の故障で困ってる男が、屋敷に助けを求めてくるところから始まります。すると、なんとその屋敷の中には男の死体があり、その同じ部屋にいる美しい女性が『私が殺しました』と言い放つという、ドラマチックな始まりです。そしてこの女性は死んでいる男の妻なのですが、なぜか偶然訪ねてきたこの男が、話を聞くうちに殺した女性に同情できる点があるとして、彼女をかばおうとする話です。

ネタバレ少しあり
この作品の面白さは、観客をいかにロマンチックにだますか、ということに工夫している点かなと思います。アガサの作品は大体、読者があっと驚くような仕掛けのミステリーが得意ですが、これはそれに愛憎劇が混じるのです。突然現れた見ず知らずの男マイクル・スタークウエッターがやってきて、困っている美しい妻ローラを助けようとする、その一部始終といえばそうなんですが、お互いが一目惚れなんじゃ無いの?というくらい最初から二人っきりの掛け合いシーンが続きます。大体、突然家を訪れたら人が死んでいて、傍らにたたずむ人が”私が撃ちました”とか言ったら、すぐに警察を呼ぶなり、捕まえるなりするものでしょう?しかしそうはならない、なぜなら、お互い美男美女で恋に墜ちたから!だから!と言わんばかりの冒頭の二人の掛け合いに、観客もマイクル・スタークウェッターローラへ同情的になっていくのだろうと予想されます。(いや、そもそも、妻と言ってる時点で夫が死んでるとはいえ道徳的にどうなのと思わなくも無いけど)そしていわば突然前現れたヒーローであるかのような彼のアリバイ工作、証拠隠しなどを観客は一緒に見ているので一幕終わる頃には”どうなるのだろう?犯人の女性を男は隠し通せるのだろうか”ということに引き込まれてしまいます。しかし、だんだんと彼女の嘘が暴かれていき本当に彼女が殺したのか、それすらもわからなくなってくる。なにしろ、ローラには元々不倫相手がいるのです。ほんとに人妻とはいえ、美人ってモテるのね!(と納得させるほどにローラに魅力がなきゃいけませんが)じゃローラは悪女なのか?と言われたら同情できる背景が用意されてるし、一筋縄ではいきません。真犯人は誰だ?と観客が思った頃にはまんまとアガサの罠にはまっているのです。怒濤の後半の逆転劇にうなるしかない、作品です。
あまりにロマンチックすぎるのでこの作品を読むシュチュエーションとして無人島に持って行くよりは、秋の夜などにお酒を飲みながら読みたいなと思う本です(個人的な感想です)